教授たちから紹介された推薦図書の中には、かなり分厚いもの、電子書籍化されていない古い文献、書店では手に入りにくい本があった。ネットで見つけた古本でも数千円の値がついていたものもあった。
「それを探して、手元に届くまで待って、到着してからも全部読むまでは時間もかかる。一つの課題にそこまで時間をかけるのって、とても効率が悪いように感じました」
もともとは勉強好きで、講義にも意欲的に臨んでいた。しかし、必要な情報にたどり着くまでにかかる時間とお金にモヤモヤは募り、本を読むことに対して億劫になっていったという。
本を読む「効率」を意識し始めた彼女は、書籍を読み上げるサービスを利用し始め、手に入りにくい講義の課題図書についてはAIに要約させるようになった。
「わざわざ本を探しに行き、買わなくてもいい。教授たちにバレているのかはわかりませんが、AIに要約させるようになってから、課題の作業効率はとても上がったと思います」
そして、そもそも課題図書を読まなければ単位が取れない講義を避けるようになったという。
「本を読むことで吸収することもあるとは思いますが、時間をかけてよいものを作ろうという気持ちにはなれないです」
生講義が「ゆっくりすぎる」
学生が「タイパ」を求めるのは、大学のレポートだけではないようだ。
関東北部の国立大学に通う男子学生(22)が入学したのは、コロナ禍が収束してまもないころ。リモートでの講義も一般的だった。講義の録画を通常の2倍速で視聴したあと、実際に対面で受けてみると、教授たちの話が「ゆっくりすぎてイライラした」。