子どもと一緒に楽しむのもフジロックの醍醐味だ(撮影/Daiki Miura)

 お子さん連れのお客さんも増えていますし、3世代で来てくれる方もいらっしゃるんですよ。子どものときにフジロックの雰囲気を味わった人たちが、大人になって戻ってきてくれるのがいちばんいいですね。確かにチケット代は高いですが、経費や人件費も上がっているし、そこはご理解いただけたらなと。

――実際に行けば「すごく楽しかった」という人が多いと思いますが、行ったことがない人にとっては「遠いし、野外だし、交通費や宿泊も大変だし、ハードルが高い」というイメージもあるようです。

 魅力を伝えるための動画を作ったり、毎年のようにいろいろな施策を行っているのですが、いくら言葉や映像で伝えても、やっぱり実際に来てみないとわからないと思うんですよ(笑)。去年は(Prime Video、Twitchで)配信しましたが、「配信でいい」という方はなかなか会場に来てくれない気がして。むしろ「以前は行っていたけど、最近は足が遠のいていた」という人が配信を見て、「また行きたい」と思ってくれたらいいなと。

――なるほど。

 フジロックは野外フェスだし、行ったことがない方にとっては、確かにハードルは高いと思うんですよ。SUMMER SONICのように電車で気軽に行けるフェスのほうが便利でいいという人ももちろんいるでしょうし、野外が好きじゃない方もいらっしゃるので。なので我々としては「ダマされたと思って、1回来てみてください」しかないのかなと。

――来てみればフジロックの楽しさがわかるよ、と。97年に始まったフジロックは30周年が間近に迫っている。今後のビジョンについては?

 1999年に会場を苗場に移して、2019年まではある程度同じような形で続けてきたのですが、コロナ禍の時期にフェス会場の構成を見直したんです。ずっと来てくれているお客さんを大切にしながら、新たに発展していく部分も必要なのかなと思っています。

――私も毎年フジロックに行っていますが、出演者、スタッフの方々を含めて、「フジロックだからやる」という思いが強い印象があります。

 確かにフジロックに対して思いを持って関わってくれる方は多いですね。もちろんとてもありがたいのですが、こちらとしてはそれに甘えることなく、しっかりビジネスとして成立できるようにしないといけないですよね。フェスの開催にはリスクが伴いますが、仕事として成り立たないと継続はできないので。

(取材・文/森朋之)

*FUJI ROCK FESTIVAL’25は2025年7月25日(金)26日(土)27日(日)に、新潟県湯沢町苗場スキー場にて開催予定。
オフィシャルサイト:https://fujirockfestival.com

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