そんな強酸性の雨水がタイルの剥がれたところ、あるいはタイルが張られていないコンクリート部分のクラック(ひび)から建物の内部にしみ込むと、徐々にコンクリートが中性化。内側にはりめぐらされた鉄筋を錆びさせる原因になります。

修復不能になるどころか
売ることも困難に

 また、鉄筋の錆がひどくなると、その分だけ体積が増えるため、周囲のコンクリートを突き破って破裂させることがあります。この現象を「爆裂」と呼びますが、一度爆裂が起きると建物の強度が下がってしまい、修復するのが難しくなります。

 そのせいもあって、爆裂が起こり鉄筋が露出してしまった物件については、買うときにフラット35の住宅ローン(編集部注/長期固定金利の住宅ローン。最長35年間の全期間固定金利で、資金の受取時に返済終了までの金利と返済額が確定する)が組めないというルールがあります。逆に、買ったマンションで爆裂が起きてしまうと、将来売却するのが難しくなるとも言えます。

 建物の中で爆裂が起こりやすいのは、ベランダ・バルコニーの上裏です。上裏とは、上階のベランダの裏側部分のことで、ここにクラックがあったり、そのクラックから錆の色がついた水(錆汁)がしみ出していたりする場合、爆裂の危険性があります。下のベランダにコンクリート片が落下するかもしれないので、注意が必要です。

 下手をすると大ケガにつながりますが、これはタイルの剥落でも同じです。小さなタイル1枚であっても、高い位置から落下すれば加速度がつくので、下に人がいたら大ケガを負わせる危険性が十分ありますし、最悪の場合は死に至らしめることも。

 実際、タイルが原因で通行人が死亡したり、重傷を負ったりした事例はありますし、車が破損した例も数多く報告されています。

 外壁タイルによる被害が生じた場合、責任の所在はどこにあるかといえば、管理組合(区分所有者全員)にあります。竣工(しゅんこう)して間もないマンションであれば、施工会社や分譲会社の責任が問われることもありますが、基本的にはマンション敷地内の共用部で起きた事故において、管理責任を負うのはそのマンションの区分所有者全員です。

 実際、マンション敷地内で起きた事故により、住民全員が過失致死の疑いで刑事告訴された事例もあります。

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