「これでは高齢期に入る人たちの勤労意欲が上がらないのは当然です。今の労働市場は氷河期世代を救えない構造になっています」と指摘した。
熊野さんは政府に対しても「雇用延長に努力をしてきたが、賃金格差についてはあまり努力をしてこなかった」とみる。50代以降になると、これまでと同じような仕事をしていても給料は半分というケースも珍しくはない。それを社会が受け入れているようにも見える。
「もっと氷河期世代を活用し、やる気にさせないといけない。企業もやむを得ず高齢期の人を低賃金で雇用するのではなく、意欲を引き出すべきだ。そうしなければ労働力不足の問題はより深刻になる。このままでは10年先に禍根を残す」
熊野さんはそう警告した。
政府も手をこまねいているわけではない。ハローワークに相談窓口を設け、この5年間で氷河期世代の正規雇用が11万人増えるなど計31万人の処遇改善を図ったとアピールしている。ただ、氷河期世代は約1700万人いるとされ、効果は限定的とみられる。
参院選を前に野党幹部は一斉に氷河期世代への厚い支援を口にする。政府も対策をさらに強化しようと、4月25日、「就職氷河期世代等支援に関する関係閣僚会議」の初会合を官邸で開いた。
石破茂首相は「今もなお、様々な困難を抱えている人が大勢いる」と述べ、賃金上昇策について関係閣僚に検討を求めた。各省庁の案は6月のいわゆる「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)2025」に盛り込まれる見通しで、その内容は参院選の結果にも影響を与えそうだ。
(経済ジャーナリスト 加藤裕則)
