
「フリーランスで大学の非常勤講師をしているが、給料がまったく上がらない。掛け持ちしているが、生活できるレベルではない」(女性)
こんな声もあった。「氷河期世代が中高年になって本当にやばいと国も気が付いたのだと思いますが、遅い気がします。不遇な目に遭ってきた世代が歳をとったとき、どんな行動に出るのか。(ニュースで)凶悪事件があると、すぐに犯人の年齢を見てしまう。私たちのような世代を生み出さないような社会構造にしていく必要がある」(49歳、女性)
就職氷河期世代を落胆させるデータがある。
第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生さんが厚生労働省の統計データを使って年代別の給与の増減率を比べてみると、氷河期世代が割を食う実態が浮かび上がった。
2019年から2024年の変化率を調べたもので、20代は10%ほど伸びていた。30代は5%ほどで、これが40代ではほぼ伸びが止まる。50代後半はシニアの給与改定の関係などでプラスに出たが、50代前半はマイナス3%だった。
四半世紀前、就職に苦労した氷河期世代。この間、賃金水準は低迷した。産業界には「ベア(ベースアップ=基本給の水準を上げること)は過去のもの」と言い放つ経営者もいた。
賃金を上げようという機運が高まったのは、せいぜいこの数年だ。経団連が「賃上げは社会的な責務」などと、賃金上昇に明確に舵を切ったのは3年前のことだ。
やっとここにきてベアが復活したと思ったら、40代後半から50代後半は社内では比較的給料が高い。このためベア獲得となっても、配分が若手に偏った。すでに管理職になっていると、残業代がつかなくなったり、成果に応じた賃金制度に移行したりして思うほど上がらないケースも少なくない。
経営者の関心はいま、「どうやって若い人を採用するか」に集中している。
熊野さんは氷河期世代の冷遇について「日本経済の大きな問題だ」と力説する。
氷河期世代は、上にバブル世代がいて、最近、入社してくる若手は何かと優遇される。その分、自分たちの給料は上がらない。