
就職以降、日本経済の停滞で給料が上がりにくい状況が続いてきた就職氷河期世代。ようやく賃上げの機運が高まったと思いきや賃金は下降局面に入り、「世代ガチャ」の様相を呈している。
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大阪府の49歳の男性は就職氷河期のまっただ中で大学を卒業した。志望する企業には落ち続け苦労して内定を得た会社は、いわゆる「超ブラック企業」だった。
パワハラが横行し、労働環境も悪く、3年もたたずに退職。精神を病んで2年間、家を出られず、ひきこもりになった。
その後、派遣で食いつなぎ、30代で通信会社の正社員になれた。年収は300万円台後半。待遇の改善を求めて転職を試みるが、自分より若い人が優先され、思うような転職先は見つからなかった。
40代で今も勤務する通信業界の会社に転職した。年収は500万円ほど。家族を支えるにはもう少し欲しいと思い、別の通信会社にチャレンジするが、マネジメントという役職の経験がないことを理由に断られ続けた。
男性の主な仕事内容は、企業の通信機器の設置やシステムの構築、保守・点検だ。数カ月ごとに勤務地を転々とする。「正社員ではあるが、派遣社員でもありました」と言う。
有期雇用の一般的な「派遣社員」とは異なり、派遣元からは正社員で雇われているものの、働く環境は「派遣社員」と大きな差はない。数カ月ごとに派遣先が変わるたび、「次は仕事があるのだろうか」との焦燥を常に感じる。正社員であるが、次の仕事がなければ「待期期間」として給料は大幅にカットされるという。
派遣先では、通常業務をこなしつつ、その会社の若手社員らに指導や指示もする。しかし、「課長」や「リーダー」という肩書を受けることはなく、転職にも生かせない。自分の受け取る給与は、派遣先から支払われる分の3割は派遣元に搾取されているのではとの疑念もある。
男性は複数の通信技術の資格を持ち、社会経験も豊富だが、一定の役職に就けなかったため、希望する転職は通らなかった。
もうすぐ50歳を迎える男性はこうもらす。
「家庭を持ち、見た目は一般的な社会生活を送れていますが、実情はこの年で『派遣』です。低賃金のままでたいしたたくわえもなく、妻と老後を迎えることが非常に不安です」
氷河期世代の多くが、正社員になれず「非正規」や「派遣」という働き方を選択せざるを得なかった。この男性のほかにもAERAのアンケートでは、切実な声が寄せられた。