
日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「パニック発作」について、鉄医会ナビタスクリニック内科医・NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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アメリカに移住して間もない頃、日常のささいな場面で戸惑うことが続きました。英語での買い物、病院の予約、郵便の手続き……。話せない、聞き取れない。そんなストレスが大きかったように思います。日本語であればたいしたことのないやりとりも、英語になると一気に壁が高く感じられました。気づけば、理由のない不安に襲われることが増えていました。
私の場合、巨大な何かに後ろから追いかけられているような感覚と、それに伴う気の遠くなるような、何とも言えない感覚に襲われます。それらの感覚がどんどん強くなるとともに、動悸と息苦しさを感じるようになるため、目を閉じて、意図的に深呼吸を繰り返します。そうすると、一連の症状は落ち着きます。自然と身につけた、発作に対する対処法です。
実はこの感覚は、もっと昔から経験していました。小学校6年生の頃、中学受験のために日々勉強漬けだった私は、ふとした瞬間になんとも言えない恐怖感に襲われることがありました。大きなゴジラのような存在が背後から迫ってくるような、言葉にできない焦燥感。でも、目を閉じて深呼吸をすると、不思議と落ち着いたのです。一心不乱に勉強していたこともあり、誰にも相談することはありませんでした。
医学部の同級生から言われて気づいた
思い返すと、中間テストや期末テスト期間や、大学受験のとき、そして医学部での専門科目の試験がいくつも続いた時に、不定期ではあるものの、同様の感覚に襲われていたように思います。大学の医学部でポリクリ(臨床実習)をしていた頃、同級生にそんな話をしたところ、「それ、パニック発作なんじゃない?」と言われ、はっとしたのを覚えています。精神科の講義で学んだ症状に重ね合わせると、確かに思い当たる節が多く、ようやく自分の体験に名前がついたような気がしました。