第4局に勝利し、感想戦で笑顔を見せる永瀬拓矢九段(左)。右は藤井聡太名人=2025年5月18日、大分県宇佐市の宇佐神宮
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年6月2日号より。

【貴重写真】和服じゃない!スマホ片手にデニム姿の藤井聡太さん

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 5月17・18日、大分・宇佐神宮において、第83期名人戦七番勝負第4局、藤井聡太名人(22)-永瀬拓矢九段(32)戦がおこなわれた。1日目は61手で千日手が成立。2日目の指し直し局は大熱戦の末、141手で永瀬挑戦者が劇的な逆転勝ちを収めた。

永瀬「途中から内容としては非常にわるい将棋を指してしまったと思いますので。その点はまだ全然改善できていないのかなという気はしています」

藤井「全体的に読みの精度がやはり足りていなかったかなというふうに感じています」

 七番勝負はここまで藤井が3連勝。カド番に追い込まれていた永瀬は1勝を返して、第5局につなげた。

永瀬「一局でも多く教えていただいたことはやっぱり勉強になりますので。それが次につながることができてよかったなと思います」

 1日目、後手の永瀬は第2局に続き、変化球気味の戦型を採用。巧妙な指し回しで千日手に持ち込んだ。

藤井「先手番なので本意ではないですけれど。やむを得ない形になってしまったかなという感じがしました」

 2日目の指し直し局は先後が替わって永瀬が先手。残り時間でも大差がつき、永瀬が大きなアドバンテージを得て始まった。しかし藤井は永瀬の新工夫に対してうまく対応。終盤に入ったところではペースをつかんだように見えた。多くの観戦者は、そのまま藤井防衛を予想したと思われる。永瀬はあきらめずに辛抱を続けた。そして両者ともに時間が切迫する最終盤で、さしもの藤井も最善の順を逃した。形勢が大きく揺れ動いた末、最後は永瀬が値千金の逆転勝利を収めている。

 将棋は最後までなにが起こるのか、本当にわからない。藤井名人を相手に、永瀬挑戦者はここからさらに押し返すことはできるだろうか。(ライター・松本博文)

AERA 2025年6月2日号

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