2人に1人が奨学金を借りる時代。トラブルも顕在化している(photo gettyimages)

親が肩代わり返済の事例も

「最近、特に多いのが親御さんからの相談です。『親御さん』といっても、80代など高齢の方が多く、これはいわゆる『8050問題』に近いのではないかと考えています。つまり、息子さんや娘さんが50代になっても安定したキャリアを築けず、収入も十分に得られていない。そのため、奨学金がまだ残っており、親が代わりに返済しているという状況です。親はこれまで何とか返済を続けてきたものの、『自分が亡くなったら誰が返すのか』『残された子どもに返済能力はあるのか』という不安を抱えている。こうした相談が最近、確実に増えていると感じています」

 本来であれば、奨学金の返済は20年ほどで終わるため、40歳頃には完済しているはずだ。しかし、病気などによって「減額返還制度」や「返還期限猶予制度」を利用した結果、50代になっても返済が続いている人が少なくないという。

「今後、団塊の世代の親が亡くなっていく中で、もし多少なりとも財産を残してくれていれば、それを使って子どもが返済する可能性もあるでしょう。しかし現実には、すでに親の年金を頼りに生活している家庭も多く、その年金がなくなれば返済の見通しが立たないというケースも少なくありません」(西さん)

国立大も学費値上げ

 進学率は上昇傾向にある中で大学の学費は上昇傾向にある。国立大学も例外ではなく、東大も2025年度入学生から学部生の授業料を約11万円引き上げ、年間64万2960円にすると決定したばかり。実に20年ぶりの授業料を値上げは大きなニュースとなった。 大学ジャーナリストの石渡嶺司さんはこう語る。

「東京大学が値上げしたからといって、他の私大などが『だったらうちも』とはならないでしょう。値上げに踏み切った結果、志願倍率が極端に落ちるというリスクがあるからです。仮に値上げしたとしても、東京大学のように上限いっぱいの11万円近くまではいかず、控えめな幅にとどめる大学が多いのではないでしょうか」

 大学で学ぶ機会を得るため、多くの学生が多額の奨学金を借りる現象はより加速していくとみられる。しかし、その奨学金が両親に悪用されたり、病気や事故などで将来的に返済が困難になるリスクがあることを知っておくべき時にきている。

(AERA編集部・古寺雄大)

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