ここまでさんざん「バカ」と書いてきたが、よく見てみると、カット数が多く、カメラワークも多彩で、セリフをタイトに詰め込むなど、ハイテンポな演出は時流に合っている。笑わせるにしろツッコませるにしろ、直感的な「バカ」を感じさせて考える余地を与えない。古典的に見えて、最も新しいドラマにも見えてくる。
主演の唐沢寿明は、ツッパリ高校生、ブルース・リー、ホームレスなどのコスプレを全力でこなし、元スーツアクターらしくアクションでも大暴れ。これまで山崎豊子作品などでハードボイルドな役柄を演じてきた唐沢が、子どもたちから「バカ」と指をさされて、本人もそれを存分に楽しんでいるのだから痛快ではないか。
当作はHuluとの共同制作。「クール」や「カワイイ」もいいが、日本が誇る「バカ」も、堂々と海外に出してもらえたら、と本気で思っている。テレビの多様性を担保する意味でも、同作の存在意義は少なくない気がするのだ。
※『GALAC(ぎゃらく) 1月号』より
木村隆志(きむら・たかし)/バラエティの「バカ」ですらBPOの審議対象になるほど、テレビ番組への不寛容なムードが顕著に……。当然ながらそれを楽しんでいる人もいるだけに、ドラマのプロが作る「バカ」は生き残ってほしい。