さらには、Z世代の間でBeReal.というSNSが流行し始めたことが、ギャザー顔に対するイメージを大きく変えるきっかけとなった。BeReal.は、決まった時間に通知が来て、その瞬間に加工なしの写真を前後カメラで撮影・投稿するというアプリで、「飾らない自分」を共有するものだ。
このような無加工・至近距離での自撮りが主流になる中で、アップにするとパーツがはっきり写りやすいギャザー顔が「盛れる顔立ち」として注目されるようになったのだ。
事例③ヒロアカ体型:女性らしさが魅力に
ヒロアカ体型とは、漫画「僕のヒーローアカデミア」に登場する女性キャラクターのように、程よく肉感のあるバランスのとれた体型を指す。細すぎず、太ももや胸、二の腕などに柔らかさを持ちながら、全体としては健康的で引き締まった印象を与えるのが特徴で、比較的低めの身長であることもその可愛らしさの一因とされる。
かつては「細い=美しい」という価値観が、SNS上のみならずファッション業界やメディア全体で広く浸透していた。体型に対する理想像として、極端に細いスタイルがもてはやされ、特に若い女性の間では「少しでも太っていると可愛くない」という強いプレッシャーが存在していた。
しかし最近では、そうした一辺倒な美の基準に対して疑問の声が上がりはじめている。アニメや漫画、特に「僕のヒーローアカデミア」などの作品に登場する女性キャラクターの影響もあり、「ヒロアカ体型」と呼ばれるスタイルが新たな魅力として注目されている。
「健康的で柔らかいライン」が好まれるようになった背景には、現実の身体と理想像とのギャップに苦しむ若者の声や、自己肯定感を重視する時代の流れがあるのかもしれない。「アニメ体型」として憧れられる存在が、現実の多様な体型の美しさを認めるきっかけになっているといえる。
以上3つの事例が示すように、Z世代の間では、かつてネガティブに捉えられていた容姿の特徴を“自分らしさ”としてポジティブに再解釈するという新たな価値観と言葉が生まれてきている。
これまで、SNSは他人との比較やコンプレックスを生む場になってきたが、今、多様な美しさを発見・共有し、それを肯定するプラットフォームにもなりつつあるのだ。
従来のように完璧な美を求めるのではなく、自分の特徴をポジティブに転換して楽しむ。そんな価値観の広がりは、Z世代が自己表現の幅を広げ、美の固定観念を確実に塗り替えていく力になりつつある。
今後も新語が続々生まれる予感
以上、現役大学生の解釈により生まれた「新語」はいかがでしたでしょうか?
ここ数年、自撮り写真の加工競争に疲れ切ったZ世代の間に、ようやく「反ルッキズム」の動きが明確に生まれ始めています。
人気アニメから生まれた「ヒロアカ体型」や、キャッチーなワードである「立ち耳」や「ギャザー顔」など、今後もポップでキャッチーな「反ルッキズム」を表すワードがたくさんZ世代の間で流行っていくことでしょう。
(原田 曜平:芝浦工業大学デザイン工学部UXコース教授)
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