本連載の書籍化第6弾!『鴻上尚史の具体的で実行可能なほがらか人生相談』(朝日新聞出版)

【鴻上さんの答え】

 ななみさん。そうですか。「太っていて容姿全体が悪かった」夫が、「向上心が強くストイックなイケメン」になりましたか。

 それはすごいことですね。

 そんな夫と釣り合う人になりたいんですね。

「私はどうするべきなのでしょうか」と書かれていますが、答えはななみさんが自分で言っていますね。

「出来ることなら、人間として成長して堂々と夫の横にいたい」

 つまり、「人間として成長する」これが答えですね。

 でもそれが難しい理由も、ななみさんは書いていますね。

「たまたま容姿が良かったおかげでチヤホヤされて生きてきた」からですね。

 対人関係が苦手でも、仕事がうまくできなくても、勉強ができなくても、容姿のおかげで、チヤホヤされてきたと思っているのですね。

 ミもフタもないことを言いますね。ななみさんが僕に相談したのは、容姿は年齢と共に衰えていく、ということを分かって不安に思っているからではないですか。夫が「太っていて容姿全体が悪かった」時は、容姿の良いことで堂々と横にいられたのに、その唯一の理由を失う予感に(または失ったと思って)焦っている、ということでしょう。

 容姿がダメなら、「人間的成長」ということではないですか。

 いえ、ななみさん。責めているのではないですよ。その考え方は、とても的を射ていると思います。

 どんなに美人さんもイケメン君も、残念ですが、年齢と共に、容姿は衰えます。それは、誰にも避けられないことです。美人さんやイケメン君から容姿を取ったら、何も残らなかった、というのが一番不幸なことでしょう。

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