赤いランドセルを譲り受けた女の子=米倉昭仁撮影

 それにしても、中古の学生服の買い取りと販売は「事業」なのに、なぜランドセルは無償譲渡にしたのか。さくらや創業者の馬場加奈子さんに話を聞いた。馬場さんは、「ランドセルの譲渡は、それを必要としている人に届ける『活動』」だと話す。

ランドセルは「必需品」ではないのに

「実は、法令や規則でランドセルを使えと定められているわけではないんです。必要なものではないのに、高いお金を払う必要があるのか、ずっと疑問でした」

 事業ではないため、基本的に広報活動は行っておらず、譲渡会を開催する店舗がSNSやブログで発信するスタイルだ。

 中古ランドセルは、活動に賛同した人々から集めている。制服とは違い、買い取りは行わず、すべて無償だ。だが、不満が寄せられたこともない。

「みなさん、私たちの活動を応援してくれていて、次々にランドセルが持ち込まれます。置く場所がなくなり、お断りする店舗も多いほどです」(馬場さん)

リユースのさまざまなニーズ

 リユースランドセルには、「あと少しで卒業なのにランドセルが壊れてしまった」子どもたちのニーズもあるという。

 記者の息子はあと3カ月で卒業というときにランドセルの底が抜けてしまった。当時は、「リユース」という選択肢を思いつかず、無理やり自分で修理したものの、見栄えが悪く、息子に泣かれてしまった苦い経験がある。

 金川さんによると、リユースランドセルを選ぶ際のポイントは、ベルト類や側面についた「ナスカン」と呼ばれる金具に傷みや破損がないか、確認することだという。

「中は多少汚れていても、気にされる方はほとんどいません。小学校に通うようになったら、保護者はランドセルの中なんて、まず見ませんから」

 わが子のために、こだわり抜いた高価なランドセルを選ぶのもいいだろう。だが、善意で寄せられたであろうリユースランドセルにも、子どもの健やかな成長への願いが込められているのだ。

(AERA編集部・米倉昭仁)

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