
5月にピークを迎える来年度入学向けのランドセル商戦。ランドセルの購入価格は年々高くなる一方で、リユース(再利用)のランドセルを求める保護者が増えてきている。





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リユース品の無償譲渡会
「すごい! めちゃくちゃきれいなランドセルじゃないですか」
色とりどりのランドセルを前に、家族3人で会場を訪れていた30代の母親は感嘆の声を上げた。
4月末、神奈川県川崎市の介護施設で開かれたランドセルの譲渡会。
9個ほど並んだランドセルは、新品と見間違うほど状態がよいが、実はすべてリユース品だ。
母親はこう話す。
「ランドセルは新品を買うと、とても高い。うちは祖父や祖母もランドセルを買ってくれる状況ではないので、助かります」
男の子は青いラインで縁どりされた黒のランドセルを選び、うれしそうに帰っていった。

中古でもきれいな品が多い
譲渡会を開いた学生服リユースショップ「さくらや」川崎店のオーナー・金川知美さんは、こう説明する。
「最近はランドセルにカバーをつけて使うお子さんが多い。高学年になると、ランドセルではなく、リュックサックを使うお子さんもいる。なので、きれいな品が多いんですよ」
さくらやは学生服のリユースショップだが、ランドセルの譲渡活動を始めて12年になる。すべての店舗でランドセルの譲渡を行っているわけではないが、直近の6年間で全国で1022個のリユースランドセルを譲渡した。
今年度の平均購入価格は6万円
いま、ランドセルの中古市場が活気づいている。
ランドセルは高額だ。ランドセル工業会の調査によると、2025年度の新1年生のランドセルの平均購入価格は6万746円で、今年初めて6万円を超えた。6万5000円以上のランドセルを購入した人は全体の43.8%を占める。
だが、高額で購入したランドセルも小学校の6年間でおおむね「用済み」になる。
子どもが小学校を卒業した後、処分に困ったランドセルを製造会社やNPOなどが回収する仕組みは以前からあった。だが、そうして回収されたランドセルの多くは発展途上国に送られ、国内で流通することはほとんどなかった。
その状況が、いま、大きく変わりつつある。
