株式会社水星代表取締役CEO・龍崎翔子さん(29) /りゅうざき・しょうこ 1996年生まれ。東京大学経済学部卒。東大在学中の19歳で起業。ホテルプロデューサーとして斬新なコンセプトの宿泊施設を全国各地に展開(photo 本人提供)
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 東大在学中に起業し、年商10億円のホテル開発・空間プロデュース事業を生み出した「水星」代表取締役CEOの龍崎翔子さん(29)。異端の東大出身者に母校はどう映っているのか(全2回の1回目/後編へ続く)。

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 両親の仕事の都合で半年ほど米国に住んでいた8歳の頃。日本に戻る前の最後の1カ月間、家族でアメリカ横断ドライブを敢行した。一日の終わりに泊まるホテルは最大の楽しみだったが、代わり映えしない空間の味気なさにつくづく落胆した経験から、「自分が泊まりたいと思えるホテル」を世に生み出したいという渇望感と使命感に駆り立てられた。

 この原体験の衝動を抱えたまま、「将来はホテル経営をしたい」という明確なビジョンを持って東大に進学した、と振り返る龍崎翔子さん。そもそもなぜ、東大を選んだのか。

「『ホテル経営者になるための正攻法のキャリアパス』はどこにもないと判断し、自分でキャリアを開拓していくしかないと決意したのが大きかったと思います。自分よりも優秀な人たちと幅広く交わることで、キャリア開拓の手段や可能性を広げていくことが重要と考え、国内トップの東大に的を絞りました」

 もちろん、経営学や観光に関するカリキュラムが充実した大学は国内外に複数存在するが、当時の龍崎さんにとって、そうした専門性に特化した「直接的な学び」に大きな意義は見いだせなかったという。

 将来やりたいことが明確な龍崎さんは海外トップ大学向きだったようにも思われるが、周囲にロールモデルが存在せず、「学部から海外大学に行くイメージは湧かなかった」という。そんな地元は東大を志望することにすら首を傾げられる環境だった。京都市内の国立高校に通っていた当時、担任の教師からは「進路を否定するわけじゃないけど、なぜわざわざ東大に? 京大もいい大学なのに」と訝しがられたという。

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