
コスト削減するほかない自治体も
文部科学省によると、全国の約3割の自治体が公立小中学校の給食の無償化に踏み切っている(23年9月時点)。その数は6年で7倍に増えた。
ただし、給食の目的・目標である「適切な栄養の摂取による児童生徒の心身の健全な発達」の実現を掲げる自治体は少ない。9割を超える自治体が「給食無償化の目的」として、「子育て支援」を挙げた。「食育の推進」は5%未満だった。
だが、そもそも給食の予算増に割く財政力がない自治体が多いのも現実だ。
無償化によって給食の質が下がる自治体があることを、識者はどう受け止めているのだろうか。千葉工業大学工学部教育センターの福嶋尚子准教授は、こう語る。
「財政難にあえぐ自治体がコスト削減を優先してきた結果だと思います。学校給食を単なる『児童・生徒の昼飯』ととらえ、学校給食法や食育基本法の理念や、生きた教材として給食を積極的に活用することを認識していないことが背景にあります」
給食に「最低食単価」を設けては
福嶋准教授は、地域ごとに給食の「最低食単価」を設けることを提唱する。
「最低賃金のようなイメージで最低食単価を設けて、それを下回らないようにする。物価の変動を考慮して、毎年、単価を見直すような仕組みが必要だと思います」(福嶋准教授)
自民、公明両党と、日本維新の会が2月25日にまとめた3党合意には、「給食無償化」が盛り込まれた。合意文書には、「まずは小学校を念頭に、地方の実情等を踏まえ、令和8(2026)年度に実現する」と記されているほか、「地方自治体に対して、物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用した対応を促す」としている。
だが、これにより給食が豊かになるかというと、期待薄だという。
「給食無償化は国ではなく、地方自治体が進めるもの、というスタンスは変わっていません。給食費を保護者負担とする学校給食法の改正は想定していないようです。恒久的な財源が示されなかったことも懸念しています」(同)
物価高騰のなかで、質の高い給食を子どもに提供するにはどうすべきか、抜本的に制度を見直すべき時期にきている。
(AERA編集部・米倉昭仁)
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