
中山さんは、さすがに限界を感じるようになってきた。油も高い。魚のフライや揚げ物を出す献立の順番も熟慮する。
「油を取り換えるタイミングで魚のフライをメニューに入れるようにして、なるべく油が傷まないようにしています」(同)
渋谷区ではギンダラやキンメダイ
対照的なのが渋谷区だ。
「値段の高い食材を出せるようになりました」
こう話すのは、栄養士で渋谷区教育委員会学務課の谷田部功平さんだ。昨年度、給食を無償化したのを期に、給食予算を大幅アップした。
2023年度、1食あたりの単価は265円(小学校中学年の場合)だったが、給食を無償化した24年度は368円。今年度は419円と、さらに上乗せした。
「各学校の栄養士から『給食予算が増えたので、子どもたちに提供する食材の幅が広がった』と、よく言われます」(谷田部さん)
無償化以前は安い魚を選んでいたが、今はギンダラなど、ランクの高い魚を選べるようになった。
「卒業生を送り出す3月には『お祝い給食』として、キンメダイを出した学校も多かったです」(同)
物価上昇分を給食費に反映
肉も、料理に応じてさまざまな種類や部位を選べるようになった。野菜の炒め物は、もやしでかさ増しせず、彩り豊かな野菜を十分に使えるようになった。主食も、価格の高いパンの回数を増やし、「ミルクパン」「ねじり型」など、種類や形状も豊富になった。
給食費が保護者負担だったころは値上げは難しかった。無償化して区の予算を充てることにより、内容を充実させることが可能になった。それは長谷部健・渋谷区長が進める重要な施策の一つだったという。
「物価上昇分を給食費に反映させること。さらに給食の内容をグレードアップさせたいと、長谷部区長は常々言ってきました」と、横手麻理・学務課長は説明する。
教育委員会が計上した学校給食の予算案は特に反対もなく、議会で承認された。
「給食費が保護者負担だったころは、区による給食費の差はあまりなかった。無償化によって、各区の方針の違いが明確に表れていると思います」(横手課長)