対して仕事で常にへこへこ頭を下げ、上司の言いなりに動いたりお客の機嫌ばかりとったりしている人で、めちゃくちゃ内弁慶で家では威張り腐っている人というのも思い当たります。あるいは授業やテレビで非常にリベラルで立派なことを言いながら、家の敷居をまたいだ瞬間に家父長制の権化となって靴下ひとつたたまない人とか。

「関白宣言男」ができあがる背景

 もちろん仕事とプライベートのキャラが違うのは男性でも女性でもよくあることですが、女性のギャップが「しっかり者でパキッと仕事をするイイ女なのに、家ではふにゃふにゃ甘えるかわいい」的な、ちょっと萌え要素があるものが想起されるのに対して、男性の場合は「仕事でのストレスを家庭で発散する関白宣言男」のようなイメージが湧きやすい。そういえば私の担当編集者の一人にも、誰よりも早く出世した仕事のできる一面と、家がごっちゃごちゃに汚部屋になってしまうだらしない一面と両方ある女性がいました。

 一概には言えないけれど、男性のほうが社会的な生き物である度合いが高く、出世街道から外れるわけにいかないというプレッシャーや、この会社で落ちこぼれたら死ぬという危機感が大きいのかもしれません。女性で、仕事で非常にへこへこしていて家庭で夫や子供に威張り腐るというタイプの人は、外で稼ぐ女性が圧倒的多数になった今でも相対的に少ない気がします。

 さて、お便りの中に登場する彼氏さんは、外面が良い内弁慶でも、普段威張っているM男でも、仕事でへこへこしているDV関白宣言でもなく、どちらかというと「しっかり者でパキッと仕事をするイイ女なのに、家ではふにゃふにゃ甘えるかわいい猫」に近いものを感じます。男性特有っぽい、社会で役割を演じる代わりに家で本性が出てしまうとか、社会でプレッシャーにさらされるが故に変な性癖で発散するとかいうタイプというよりも、男女ともに多くいると思われる、外で張り詰めている気が、家で思いっきり緩むタイプの、比較的好感度の高いギャップ男なのではないでしょうか。

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