
中年期に多くの人が経験する心の不調「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」。「自分の人生、このままでいいのか」と思い悩みつつも踏み出せない人がいる一方、思い切って動き出した人も少なくない。
【画像】2つ以上当てはまったら要注意!「ミッドライフ・クライシス」8つの兆候
埼玉県在住の男性(46)は3月、24年間勤めていた市役所を退職し、4月から団体職員として働き始めた。
「このまま今の仕事を続けることが人生なのかと悩み、決断しました」
大学を卒業後に、埼玉県内の市役所に建築技術職として入庁した。キャリアを積み、2年前には管理職にまでなった。しかし、若手の転職が相次ぎ、職員は減少。しかも、議会対応など新たな業務も増え、負担ばかり増していった。達成感はなく、ストレスばかりたまった。1年頑張ったが限界がきた。
今の仕事にしがみついても仕方がない――。
娘が4月から大学2年生になり子育ても一段落し、妻も公務員として働いているので生活面での心配はなかったことも後押しとなった。
40歳手前で持病が悪化
こうして働き出した新しい職場は、建築行政のデジタル化を推進する業務がメインでAIを使用でき、達成感があり、残業もなくストレスもたまらない。しかも、収入も前職と変わらないという。これで満足しているかと思いきや、次なる目標を据えていると楽しそうに話す。
「まだやりたいことがあります。55歳までには、好きなウイスキーとコーヒーが飲める店を出す計画です」
ミッドライフ・クライシスから一歩踏み出せた人は、漠然とした不安を抱えながら、自分の感情や不安を直視した人が多い。
「もう潮時や、と思いました」
関西地方に住む桶井道(おけいどん)さん(51)は振り返る。
4年前の47歳の時、長年勤めた会社を退職。今は、両親の介護・見守りと向き合いながら、物書きと投資家として第二の人生を満喫している。
そんな桶井さんが心の葛藤を覚えたのは、40歳手前。それまでは、天職で楽しく頑張れていた職場から、労働負荷の高い部署に異動になった。時間的にも精神的にも体力的にも負荷は高く、内臓の持病が悪化した。その後、別の部署に異動になったが、スピードが重視され、丁寧に積み上げる自身の仕事のスタイルが評価されなくなった。会社に行くのが楽しくなくなった。