彼らが世に出る大きなきっかけになったのは、日村が演じる「子どもの頃の貴乃花」のモノマネである。特徴的な顔立ちの日村が、顔全体をゆがませて演じるこの一発ネタは世間に衝撃を与えた。これは一応モノマネということになっているが、似ている・似ていないという基準で語るようなものではない。日村が自分の見た目や表情の面白さを際立たせるための道具として、たまたまその題材を選んだだけと言ってもいいだろう。
日村の人間的魅力
このような名刺代わりのネタができたことの効果は大きかった。これをきっかけにバナナマンという芸人に注目が集まるようになり、設楽のちょっと斜に構えた皮肉っぽいキャラクターも評価されるようになってきた。そこから深夜番組を中心に活躍の場が少しずつ増えていき、メジャーなテレビタレントに成長していった。
日村のタレントとしての魅力は「人当たりの良さ」と「根っからの明るさ・優しさ」だ。ロケで出会った人々と瞬時に距離を縮めて仲良くなったり、その人たちを笑わせたりできるのは、彼の人柄によるものだ。老若男女を問わず、誰が相手でも日村は粘り強く相手の話を聞いて、親密な関係を築いていく。相手の事情にも配慮して、気を使いながら会話を進める。そんな彼のふるまいには温かみが感じられる。
テレビに出る前、バナナマンとして世界観のしっかりしたコントをやっている時期には、2人の素のキャラクターが知られることがなかったため、どこか冷たいイメージがあった。
だが、実際にはどちらも人間的魅力を持っていて、テレビタレントの適性がある芸人だった。特に、日村には人当たりの良さとナチュラルな優しさがあり、ここへ来てそういうところがますます評価されるようになっている。「愛されるカリスマ芸人」として出川哲朗のあとを継ぐのは日村しかいない。(お笑い評論家・ラリー遠田)