「ファン同士ではかえってスタンスの違いが明確になり、二次的な対決に傷つく可能性もあるため、気持ちを吐き出して整理できる場所を探してみてください。ただ、傷ついた気持ちをむやみにSNSで発信することはリスキーです。今回のように性加害も含むケースは、自分の発言が二次加害につながる可能性もあります」(伊藤さん)

「まるで加害者家族」揺らぎも

 ファンのなかには、「まるで加害者家族になったような気持ち」だと感じている人もいる。その揺らぎも、決しておかしいことではないという。

「性加害をした人の親や配偶者が『そんなことをするわけない』と否認することもよくあることで、推しと心の距離が近かった人がそういう気持ちになることは理解できます。どんな気持ちが出てきても、自分のなかにある自然な反応だと認めてあげてください」(同)

 矢野経済研究所の「『オタク』市場に関する調査」のアイドル分野では、2022年度には1650億だった市場規模は、23年度には1900億に拡大。24年度にはさらに市場規模が大きくなることが予想されている。

 推し活が広がるほど、それに伴う課題も浮き彫りになる。伊藤さんは言う。

「推し活にはさまざまなメリットがあり、うつ病治療のポイントになる行動活性化にも良い影響をもたらすことがわかっています。一方で、推しは推しであって家族や友達ではないという線引きも重要です。自分の心に身近な存在ではあるけれど、『推しと人生は交わらない』とクールにとらえておくほうがいい。一人の推しに夢中になるよりも、いろいろな推しをつくって、居場所を増やすこともおすすめです」

(AERA編集部・福井しほ)

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