全盲の芸人・濱田祐太郎さん(撮影/中西正男)
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 ピン芸人日本一決定戦「R-1ぐらんぷり2018」で王者になった濱田祐太郎さん(35)。先天性の視覚障害があり“目の見えない芸人”としてオンリーワンの道を歩んでいます。5月30日には吉本新喜劇とのコラボ公演「盲目のお蕎麦剣士が巻き起こす新喜劇」に主演し、さらなる一歩を踏み出します。見えない自分だからこその使命。目指すべき形。今の思いを吐露しました。

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「お前、ホンマに頑張ってるもんな。お前は売れなアカンで。もし、舞台をやりたいと本気で思ってるんやったら、周りの人にオレが話をするから」

 去年、間寛平師匠からいただいた一言が、今回の「盲目のお蕎麦剣士が巻き起こす新喜劇」の公演につながりました。寛平師匠の懐の深さ、人間としての大きさを改めて体感した言葉でした。

 2025年2月の大阪マラソンのお仕事をきっかけに、間寛平師匠にお食事に連れて行く機会がありました。同期の(お笑いコンビ)「もも」のまもる。と一緒に行かせてもらったんですけど、寛平師匠が本当に、本当に、やさしくて。ただただ楽しい宴席でお酒の勢いもあって、ずっと頭にあったことをお伝えしたんです。

「子どもの頃から新喜劇が大好きだったんです。いつか舞台上で寛平師匠が振り回してらっしゃる杖と、僕の白杖で思いっきりシバキ合いをしたいと思っています」と話をさせてもらいました。「メチャメチャ面白いやんか!」。すぐに寛平師匠がノリノリで言ってくださいました。

 さらに場が盛り上がってカラオケにも行かせてもらいました。そこでも本当に楽しくお酒を飲ませてもらったんですけど、スッと寛平師匠が横に座られて、さっきまでのポップなトーンではない声で静かにおっしゃったのが、冒頭の「舞台をやりたいと本気で思ってるんやったらオレが話をする」というお言葉でした。僕にとってはまさに恩人です。

 ただ、目の見えない状況で芝居をする。しかも、殺陣のシーンもある。「やるぞ」という気持ちだけで成立するものではないので、殺陣に習熟してらっしゃる新喜劇の平山昌雄さんが週2のペースで稽古をしてくださっています。

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