おおはし・ゆかこ/1959年、東京都生まれ。フリーライター・編集者。著書に『満心愛の人 益富鶯子と古謝トヨ子』(インパクト出版会)、『ニンプ→サンプ→ハハハの日々』(社会評論社)など。最新刊は石原燃との共編著『わたしたちの中絶』(明石書店)(撮影:写真映像部・上田泰世)
おおはし・ゆかこ/1959年、東京都生まれ。フリーライター・編集者。著書に『満心愛の人 益富鶯子と古謝トヨ子』(インパクト出版会)、『ニンプ→サンプ→ハハハの日々』(社会評論社)など。最新刊は石原燃との共編著『わたしたちの中絶』(明石書店)(撮影:写真映像部・上田泰世)
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 AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

【写真】想像を絶する理不尽を経験し、乗り越えてきた“名訳家”たちを読み解く一冊

 翻訳者も編集者もまだほとんど男性だった頃の出版界に飛び込み、半世紀以上も翻訳してきた女性たち。数々の名訳を残す中村妙子、深町眞理子、小尾芙佐、松岡享子のインタビューをもとに4人の翻訳家の人生をつづった、連載「“不実な美女”たち」(光文社WEB)を書籍化した『翻訳する女たち』。単行本への書き下ろしとして、フェミニズムの思想を日本に紹介してきた、加地永都子、寺崎あきこ、大島かおりの章を収録した一冊『翻訳する女たち』。著者の大橋由香子さんに同書にかける思いを聞いた。

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 中村妙子、深町眞理子、小尾芙佐、松岡享子、翻訳者も編集者も男性が圧倒的だった時代から、半世紀以上も翻訳をしてきた女性たち。彼女たちの人生と仕事に対する思いがこの本にはたくさん詰まっている。著者の大橋由香子さん(65)は、翻訳者と学習者向け雑誌「翻訳の世界」編集者として、そして、「光文社古典新訳文庫」の創刊メンバーとして、翻訳家たちと交流してきた。

「雑談の中で『戦争中はこうだったのよ』とか、『子どもの頃はこんなふうだった』といったエピソードが自然と出てくるんですね。特に戦前や戦中、敗戦直後の話には、『そんなことが本当にあったんだ』と驚かされると同時に、そういった貴重な体験をもっと伺いたい、記録にも残したいと思いました」

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