リゾートバイト先の宿泊施設で調理をするシニア男性は元百貨店勤務だという(photo ダイブ提供)
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 先週に多く読まれた記事の「見逃し配信」です。ぜひ御覧ください(この記事は「AERA DIGITAL」で2025年4月21日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のまま)。

【写真】”リゾートバイト”にはまるシニア層 「お金よりも経験」「ご褒美のような時間」

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50歳以上が12年で58倍に

「リゾートバイトの担い手といえば若者」というかつての常識が覆りつつある。観光地などで働く50~60代が急増しているのだ。シニアらを引き寄せる魅力は何なのか、人材派遣やマッチングを行う企業経営者に実態を聞いた。

 リゾートバイトに特化した人材派遣事業などを行う「ダイブ」(東京都新宿区)の庄子潔社長は昨年、ある変化に気づき息をのんだ。

 同社のサービスを通じてホテルや旅館などで働いたことのある50歳以上の就業者数は、2022年の199人から24年の759人へと3年間で約4倍に急増。12年の13人を起点にした場合、なんと58倍に膨らんでいたのだ。

 リゾートバイトは全国各地のリゾートホテルや旅館、テーマパークやスキー場などに数カ月~半年間移住し、住み込みで働くスタイル。その担い手といえば、時間と体力のある学生などの若者というイメージが強かった。同社もコアの利用者は25~44歳で全体の6割を占める。50歳以上は利用者全体の1割にすぎないが、その急増ぶりに庄子さんは目をみはった。

「02年の創業時からコア・ターゲットは一貫して20~40代でした。にもかかわらず、マーケティング調査すらしてこなかった50~60代の方たちの利用が、オーガニック(自然流入)な形で急増していることに驚きました」

 未開拓だったシニア層に、ビジネスチャンスの予兆が突如浮かんだ。とはいえ、シニアらが何を求めているのかは想像の範囲外だった。

「50~60代といえば、『失われた30年』を生きてきたど真ん中の世代。『派遣』という言葉にもネガティブなイメージを持つ人が多いはずです。なのになぜ、派遣社員のリゾートバイトを選ぶのか理解が追い付きませんでした」(庄子さん)

 同社は昨年9月、ニーズや志向を探るため、50~65歳のリゾートバイト経験者を対象にアンケートを実施。リゾートバイトを始めた理由(複数回答)については、「新しい環境で経験やチャレンジをしたかった」(53.6%)が最も多かった。具体的な夢や目標を尋ねたところ、「リゾート地でのセカンドライフの充実」や「リゾートバイトで全国を回る」、「リゾートバイト先での移住」といった回答が目立った。

ダイブの庄子潔社長 しょうじ・きよし/1979年、宮城県生まれ。高校卒業後、音楽を学ぶためにアメリカの短大に留学。帰国後、派遣社員として工場勤務などを経て、2003年に観光地に特化した人材会社(現・株式会社ダイブ)の設立に参画。12年に代表取締役就任 (photo本人提供)
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