
制球難という課題は本人が一番理解しているだろう。マリナーズ傘下3Aタコマの藤浪晋太郎が、野球人生の岐路に立たされている。
4月26日(現地時間)のアストロズ傘下3Aシュガーランド戦で4回に登板すると、先頭打者にストレートの四球。次打者の中前打で無死一、三塁とすると、続いて遊ゴロ併殺の間に失点。これで5試合連続失点、防御率は12.38となった。
四球や暴投など制球難がらみの失点が続いている。象徴的なのが22日のシュガーランド戦だった。
6回1死三塁からマウンドに上がったが、ストライクが入らない。1人目の打者をストレートの四球で歩かせると、続く打者への2球目がワンバウンドになる暴投で先制点を許す。この打者は結局四球。3人目の打者も四球で満塁にすると、続く4人目の打者への初球は頭部付近にすっぽ抜ける暴投で2点目を与えた。藤浪も混乱していたのだろう。2球目もひっかけて連続暴投となり、3点目を献上。1死三塁となり、さらに中犠飛で4点目を失い、5人目の打者にストレートの四球を与えたところで降板した。5人の打者と対戦して1死しか奪えず、4四球3暴投、3失点という大乱調だった。ショックが大きかったのだろう。重い足取りでベンチに戻ると座り込んでうなだれていた。
「直球は150キロ中盤出ていていましたが、明らかに抜けたボール球が多いので打者に見切られてしまう。スプリット、スライダーも操れていない。打者と対戦する以前の問題でした。ストライクゾーンに投げ込めれば十分に勝負できますが、この課題を10年近く克服できていない。悩みは深いですよね」(米国の通信員)
藤浪は高卒1年目から3年連続2ケタ勝利をマーク。この時が全盛期と言われているが、決して制球が良かったわけではない。プロ3年目の2015年は14勝7敗、防御率2.40で最多奪三振(221)のタイトルを獲得したが、82与四球、11与死球、9暴投はいずれもリーグワーストだった。藤浪と当時チームメートだった球団OBが振り返る。
「荒れていたけど、三振数も多い。近鉄で投げていた時の野茂英雄さん(現パドレスアドバイザー)に似ていましたね。球威で押し込む長所を伸ばすべきだったと思うんですけど、課題の制球難を克服するためにフォームを修正したら歯車が狂ってしまった。リリースポイントがバラバラで抜けたりひっかけたりするので、キャッチボールでも暴投が目立った時期がありました。色々な指導者が助言を送りましたが、制球が改善できない。1軍定着すらできなくなり、長いトンネルから抜け出せなくなったように見えましたね」