
「納得いくまで米国でプレーするのでは」
再起を誓い、ポスティングシステムで海の向こうに渡ったのが22年オフだった。翌23年はアスレチックス、オリオールズで計64試合登板して7勝8敗2セーブ5ホールド、防御率7.18。昨年はメッツに入団したが、右肩の張りなどもあってメジャーでの登板はなかった。今年はマリナーズとマイナー契約を結び、春季メジャーキャンプに招待選手として参加したが、オープン戦8試合登板で防御率5.87とふるわず、開幕メジャー入りを逃した。マイナーで3試合連続無失点をマークしていたが、その後は大量失点の登板が多い。
「現実的に考えれば、メジャー昇格は極めて厳しい。藤浪が渡り歩いてきた球団は制球力を向上させようと、技術面、精神面で色々な助言を送ってきましたが、なかなか結果に結びつかない。31歳という年齢を考えると、今後の伸びしろに期待する立ち位置ではなくなっている。日本球界復帰が現実的な選択肢になりますが、現在はそのような情報が流れていません」(メジャーを取材するスポーツ紙記者)
現状の藤浪を見ると、日本球界から好条件のオファーが届くとは考えづらい。セ・リーグ球団の編成担当は「潜在能力の高さは誰もが認めますが、阪神でも1軍で長い間活躍できていなかった。メジャーでパフォーマンスが上がっていないので、獲得は検討していません」と明かす。
藤浪をよく知る関係者は、「本人は日本球界に戻ることを考えていないと思います」と話す。
「阪神を出てメジャーに挑戦することを決断した時点で、いばらの道を覚悟しているでしょう。メジャーに上がれずに苦しい時期を過ごしていますが、米国での表情を見ると明るいんですよ。社交的な性格ですし、英語でどんどん話しかけにいくのでチームメートの輪に溶け込んでいる。憧れの地で貴重な経験をしていると思います。筒香嘉智(現DeNA)のように納得いくまで米国でプレーするんじゃないですかね」
筒香は19年オフにDeNAからポスティングシステムを利用し、レイズに移籍。打撃不振に苦しみ、ドジャース、パイレーツを渡り歩いた。23年以降はメジャー昇格が叶わず、米国の独立リーグでプレーした時期もあった。NPBの複数球団から獲得オファーが届いたが、メジャー昇格の夢を追い続けた。昨年のシーズン途中にDeNAに復帰したが、異国の地で最後までもがいた経験は今後の野球人生に必ず生きるだろう。
藤浪に今後与えられるチャンスは決して多くはないはずだ。それでもアメリカンドリームをつかむため、藤浪は異国の地で腕を振り続ける。
(今川秀悟)