(写真はイメージ/撮影・写真映像部・和仁貢介)
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 過重な部活動によって、教員の授業準備にも支障をきたす状態が続く――。教員たちが部活動に疲弊する要因のひとつには、保護者からのクレームがある。

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保護者から圧「これじゃ強くなれない」

 自分なりに一生懸命、部活動顧問を務めてきたつもりだ。

 だが、保護者から詰め寄られるたび、やるせない思いに襲われる。

「なぜ、試合をもっと増やさないんだ!」

「あんたは片手間で指導しているのか。これじゃあ強くなれない」

 東北地方の公立中学校に勤めるマコトさん(仮名、50代)は、保護者からの「圧」を常に感じてきた。

 練習試合では、部活動顧問が審判を務める。その試合でも、一部の保護者は容赦なく責め立ててくる。バスケットボール部の顧問だったときだ。

「いまのは反則じゃねえだろう!」

 競技経験があり、目の肥えた保護者だった。聞くに堪えない暴言も吐かれた。

 圧が強いのは、部活動で学校を選んだ生徒の保護者が多い。保護者の不満の声に敏感な管理職もいる。保護者からのクレームが耳に入ると、「しっかりやれ」と𠮟責する管理職もいる。

 マコトさんにとって、バスケットボールは、「ほとんどやったことのない種目」だった。「県外の研修会に自腹で参加して、指導方法やルールを学びました。それなのに保護者から侮辱され、暴言にさらされる。つらかったです」(マコトさん)

AERAが2025年3月実施したアンケートから

「うちの子を試合に」

 東京都内の私立学校で運動部の顧問を務めるタカシさん(仮名、60代)は、保護者に配慮し、「全方位外交」を心がけている。

 たとえばバスケットボールの練習試合では「選手全員を出す」というのだ。

 20年前は、レギュラー選手以外は試合に出られないまま終わることが多かった。保護者も、大きな大会の準決勝以上でなければ「観戦に来ることはなかった」と言う。

「最近は練習試合でも、普通に保護者が見に来るじゃないですか」(タカシさん)

 タカシさんは、「なぜ、うちの子は試合に出られないのか」と、保護者から言われないために、選手全員を1軍と2軍に分けて、リーグ戦形式で練習試合を行う。

「練習試合にまる1日かかっちゃうんですよ」(同)

AERAが実施したアンケートから
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