学校や仕事、生活での悩みや疑問。廣津留さんならどう考える?(撮影/吉松伸太郎)
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小中高と大分の公立校で学び、米・ハーバード大学、ジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(31)。その活動は国内外での演奏だけにとどまらず、大学の教壇に立ったり、情報番組のコメンテーターを務めたりと、幅広い。「才女」のひと言では片付けられない廣津留さんに、人間関係から教育やキャリアのことまで、さまざまな悩みや疑問を投げかけていくAERA DIGITAL連載。今回は英語でのコミュニケーションについて。現地で暮らしたからこそ気づいたことを教えてもらった。

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Q.  廣津留さんが英語でのコミュニケーションで大変だったことを教えてください。日本との違いを感じたことはありますか?

A. ハーバードに入って1年目は授業のスピードや英語独特の言い回しに慣れず、大変でしたね。特にはじめのうちは英語でのコミュニケーションに慣れていないので、意見を求められてもパッと反応できないんですよ。でも、海外からの学生に対する大学側のケアがしっかりしていて、先生が授業で当てるタイミングや、ディスカッションで意見するタイミングを知らせてくれたので、少しずつ慣れていきました。手取り足取り教えてくださった当時の先生には心から感謝しています。

 また、大学に入学して間もない頃、ルームメイトから「どうして、すみれはいつも笑っているの? おもしろくなければ笑わなくていいよ」と言われてハッとしたことがありました。英語での雑談に不慣れだったこともあって、ルームメイトの話をよく聞き取れなくてもとりあえずニコニコと愛想笑いをしていたんです。それが、相手には「本当に話を聞いているのかな?」と思われたようで……。それからは愛想笑いを封じて、わからないことがあれば“What do you mean?”などと、相手に聞くようにしました。そうやって聞き直すと相手もわかりやすい言葉に言い換えてくれますし、ちゃんと聞いてくれるんだと信頼されるようになった気がします。聞き取れなかったことをごまかそうとしないほうがいいんですよね。

 そうそう、日本とのコミュニケーションの違いを感じたことといえば、アメリカでは知らない人にもカジュアルに話しかけるんですよ。たとえば、ニューヨークの地下鉄。各駅停車でも突然「〇〇駅には止まりません」という車内アナウンスが流れることがあるんですが、この声がこもっていてニューヨーカーたちにも聞き取れないことが多いんです。アナウンスの後で “What did he say?”なんて車内がざわつくことがしょっちゅう。でもそこで、ちゃんと聞きとれた乗客が「〇〇駅には止まらないらしい」といった情報をみんなに共有して助けてくれるんですよね。ほかにもエレベーターで乗り合わせた人と挨拶を交わしたり、道をすれ違った人にも「素敵な服ですね」などと声をかけたり。知らない人同士のコミュニケーションのハードルが日本よりも低いですね。個人的には、知らない人と声を掛け合うだけでも友達が増えたような気がして、小さな幸せを感じることが多いです。

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