モヤモヤしていることが成長のための栄養剤になるかもしれない(小島よしお)(撮影:写真映像部・松永卓也)
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 ヤングケアラーでもある女子高生の成長を描いた小説『救われてんじゃねえよ』。筆者で介護経験者の大学院生、上村裕香さんと、小説に登場するお笑いタレント小島よしおさんが、初めて対談した。AERA 2025年4月28日号より。

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──8畳一間のアパートで、10代の女子高校生が難病の母親の介護を行う。散財癖のある父親は、何もしてくれない……。自らも高校生時代に介護経験のある上村裕香さんが書いた連作小説『救われてんじゃねえよ』(新潮社)は、少女がもがきながらも成長し、自らを取り戻していく物語だ。少女が救われる一筋の「光」、それはなんと小島よしおさんだった。

上村:私は作家の中島らもさんが好きなんです。中島さんは「その日の天使」というエッセイで「人間の1日には必ず1人、その日の天使がついている」と書かれています。絶不調で落ち込んでいる時に、外から「焼きいも~」って声が聞こえたら、ふっと笑っちゃう。意識がそっちに向かう時に、救われることがあるよねって。そういうのを自分も書いてみたいと思っていました。主人公の沙智が、ふと笑ってしまう場面で、大喜利として正解だと思ったのが小島さんでした。ピンで裸でナンセンス、だけどその芸に意味も内包しているところもしっくりきました。私は、小島さんが『救われてんじゃねえよ』を読んでどう思われたのかが気になっています。

「かわいそう」と思われることへのカウンターを書きたかった(上村裕香)(撮影:写真映像部・山本二葉)

小島:すごく不思議な気持ちでしたね。読む前に僕のことを書いてくれているというのは聞いていたんですが重いテーマですし、どこに出てくるんだろうと思いながら読んでいたら、ここで来たか!って。マジレスすると僕の「そんなの関係ねぇ!」には変遷があって、最初は破れかぶれ的な感じで使ってたんです。前のグループも解散しちゃってフリーターみたいな状態、ネタも書けないし……みたいな感じの時に出てきたのが「そんなの関係ねぇ!」でした。でも長く続けてきたことと自分が大人になってきたのもあるかもしれませんが、いまは困難に向かって「そんなの関係ねぇ!」というような意味合いを持ってやっています。なので、これは僕の勝手な解釈ですが、主人公の沙智もそんなふうに受け取ってくれたのかなって読みました。

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