自身の半生を語る石月かなでさん(撮影/インベカヲリ☆)
自身の半生を語る石月かなでさん(撮影/インベカヲリ☆)

「主婦をやりつつ、俳優をすることも認めてくれていたんです。私はまわりから『結婚したら好きなことはできないから、今のうちにやりなさい』って言われて育ったので、結婚した後も好きなことをしている自分にすごく罪悪感があったんです。俳優として芽も出ていないのに、活動させてもらっている劣等感もあった。彼はこんなに稼いでいるのに、私は……って。彼の稼ぎに見合うだけの家事ができていないって、勝手に自分を責めていたんです」

 自ら劣等感を強め、肩身を狭くしてしまったらしい。

お金を出しているほうが権力を持つみたいな結婚観が、無意識のうちにあったんでしょうね。だから、自分で壊したんですよ、結婚生活は」

 婚姻届けを出したのは、東日本大震災が起きる3日前だった。その半年後、10年間会えなかった父親が亡くなった。情緒不安定になる要因が、結婚後すぐに重なった。

「両親は、私が大学生のときに離婚したんです。父が精神的な病になって、離婚したいと言ったからだと聞いたけど、実は私が3歳のころから発病していたみたい。私にとっては普通のお父さんだったし、今も本当のところはわからない。だから、死んだときはすごく後悔した。3.11があって死の恐怖も感じたし。結婚したとたん、いろんなことがドーンと押し寄せたんですね」

 30代でホルモンバランスがおかしくなり、アレルギー症状も出るようになっていたという。

「化学薬品や添加物がダメになって、当時はコーヒーも飲めなかった。私が薄味でしか食べられないから、味付けなしの野菜炒めにご飯と味噌汁みたいな食事を出すようになったら、夫から『こんなもの食べられるか!』って言われて。怒らせるばかりになっていました」

 気づけば、うつ病になり、パニック障害になり、電車に乗ることさえ苦しくなっていた。

 心が不安定になると、夫の態度もまた、付き合っていたころとはまるで変わってしまったという。

「『なんでこんなこともできないんだ!』って責められるようになって。でも、それも結局、私が言わせているんですよね。私自身が『自分は何もできない人間だ』と思っているから、鏡として彼がそれを言ってくる。夫の態度を私が誘発させていたんだと今は思います」

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