「障がい者専門風俗嬢のわたし」から(C)araipiyoko,konishirie / KADOKAWA

身体と心の変化にどう対処していくか

 障がい者の場合、自分で予約し、店に出向き、コミュニケーションを取ること自体が難しく、第三者の助けが必要になるといったハードルもある。障がい者が利用できる性のサービスは極端に限られているのが現状で、はなから選択の余地すらない現実を知った。

「日本では性的なことが隠されがちですが、性は“身体のこと”の一部。特殊なものではなく、人間が自然に持つものです。性のサービス=性欲の処理というイメージが強いかもしれませんが、私は身体と心の変化を整理して、どう対処していくかを考えるのも性のサービスの大切な部分だと思っています」

 そして、障がい者の性についての問題意識をこう話す。

「障がい者にも性欲はあって当然。にもかかわらず、ないことにされている。これは問題だなと思いました。例えばサービスを利用したいのに、自分で予約できない人はどうしたらいいのか、もっと考えないといけないんじゃないかと思ったんです」

いかに社会から孤立して生きてきたか

 時を同じくして、障がい者の性が“ないことにされている”ゆえの衝撃的なエピソードを聞いた。障がいがある男性の性的な欲求に、実の母親が応えていた結果、妊娠した末に堕胎したという。

 耳を疑う話だったが、その母親と障がい者である息子が、いかに社会から孤立していたのかを考えたことが、今の道に進むきっかけになった。

 障がいのある息子を持つ母親が、周りの誰にも悩みを相談できず、やむを得ず自慰行為を手伝ったり、性行為に及んだりというケースは、昔から少なからずある話と知り、強いショックを受けたという。

「母親は、“自分がなんとかしないと、息子が性犯罪を犯してしまうかもしれない”と悩んだ末に、自分の身体を差し出すしかないという発想に至ってしまう。なぜ母親だけでそこまで頑張らないといけないのか、一人で抱え込まないといけないのか。そうした人々の力になりたいと強く思うようになったんです」

(構成/ライター・松岡かすみ)

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