
「清純派」と「欲」との葛藤
彼女自身、そのイメージを保とうと頑張っていた気もする。不倫騒動の翌年、11カ月ぶりの公の場となったイベントでも、純白ブラウスにデニムという爽やかなコーデが話題になった。
芸能人生最初の3年間はまぎれもなく清純派だった広末。三つ子の魂百までというように、それが成功体験として刷り込まれ、彼女の行動原理となっていても不思議ではない。にもかかわらず、欲もあり余っている人だから、バランスをとるのは常に難しいことだったはずだ。
そんな広末自身を象徴するようなドラマがある。14年に放送された『聖女』(NHK総合)だ。当時「広末涼子が初の悪女役」と報じられたように、タイトルとは裏腹の、マリアのような聖女に憧れつつも、詐欺や連続殺人で逮捕されるヒロインを怪演した。
このヒロインは常に「白い服」しか着ない。広末はこのことについて、
「白以外のほかの色を排除するという彼女の強さと、白を着ていないと清らかでいられないのではないかという弱さを感じます」
と語っていた。
オリジナルドラマということもあり、脚本家は彼女に合わせて“あて書き”をしたと考えられる。実際、広末自身も「白はテンションがすごく上がる色」だとして、好んできた。当時も今も、筆者はこのドラマが彼女のベスト作品だと思っているが、それはもう、これ以上のハマり役がないからだ。広末自身、清純派のイメージを保とうとしながらも、それだけでは収まらない欲との間で葛藤してきたのではないか。
その方向性は先輩アイドルでいえば、松田聖子に似ていて、とかくスキャンダラスな生き方になりやすい。その点、山口百恵や安室奈美恵のように、何かを得たら別の何かを諦めるような方向性のほうが、ピーク時のイメージを保てるのだろう。
最後のソロアイドル
いずれにせよ、ひとりで時代を背負うようなアイドルは広末が最後になった。彼女が大学入学で騒がれた99年、モーニング娘。が大ブレークして、21世紀のアイドルシーンはグループ中心に変わっていく。松浦亜弥も前田敦子も、ハロプロやAKBといった集団ありきの存在であり、そういう意味では広末こそ最後のソロアイドルなのかもしれない。