急激に回復したわけではありませんが薄紙をはぐように元気になっていき、体重は42㎏まで戻り、筋トレなどの運動も始めました。

 書籍の編集を任されるようになり、完全に職場復帰したのは当院の初診から約2年後。その後毎日出勤できているとのことです。種類や量は減りましたが、現在も抗うつ薬や睡眠薬は継続しています。そろそろやめどきかもしれません。

【Aさんの診療のポイント】

 腹部動悸は、おへその下あたりがドクドクと脈打っている症状で、自律神経が乱れている人に特徴的に見られるものです。竜骨湯はうつ状態に対して、第一に選択される処方です。配合されている生薬の竜骨・牡蛎(ぼれい)は精神面を安定させるほか、不眠や動悸などに効果的です。抗うつ薬を服用すると、なかなかやめられないことがありますが、漢方薬を併用することで、少しずつ薬の種類や量を減らしていくことができました。

『メンタル漢方 体にやさしい心の治し方』(朝日新聞出版)

『メンタル漢方 体にやさしい心の治し方』(朝日新聞出版)から一部抜粋

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