――その「強さ」を表現するために、この「Ice Brave」で工夫しているところはありますか
広報活動です(笑)。競技をしている時は、練習の過程をみせる習慣がほとんどなく、試合で一番いいところだけを皆さんにお見せする感じでした。ですが今回行うのはアイスショーで、たくさんの人に「観たい」と思っていただかなければいけないと思います。このショーならではの良さが間違いなくあるからこそ、一人でも多くの方に観に来てもらいたいという意志を込めて、頑張っています。
――宇野さんは、現役時代は頑張っているところを見せるのは好きではなかったように思いますが
そうですね、「頑張っている姿をみせることは、あまり素晴らしいことではない」と思っていました。結果勝負になってしまう部分はスポーツの良さでもありますが、ただ過程が大事と思っている自分としては、頑張っている姿を見せることで見る側も見せる側もプラスになるのであれば、それは見せるべきだなと。
――会見では、表現面で「課題だと思っていたところにようやく手をつけられて」いると言っていましたが、その課題について具体的にお聞かせください
いや、もう全部ですね。僕のスケートを好きで観てくれる方がいるので、あまり自分を下げたくはないんですけれども、ただ「もっと出来るよね」とはずっと思っていたので。自分の個性を出すのも大事だけれども、やっぱりまず自分には基礎が必要で、その基礎の上に個性を出したい。
僕はなるべく自分が上手くみえるように、下手にみえないように表現力を練習していました。汚いポージングがなるべく皆さんにばれないように上手く誤魔化す方法を、現役の時はずっと探していた。でも本当はそうではなく、誰が見ても「すごい」って思っていただけるような表現力を身につけたいと思っていたので。何処を見ても「上手だな」と言っていただける表現者になることが、僕の今の目標ではあります。
――会見では「ダンスを自分の技術として取り入れてみたい」と言っていました
現役の時は本当に「自分のために」というところを重視しました。プロスケーターももちろん自分がやりたいことをやるのですが、その上で観に来る人に「観たい」「観てよかったな」と思わせるには、表現力が大事になってきます。
小さい頃は、バレエを習っている時も「早く終わらないかな」と思いながら、言われたことをやっていただけでした。「何故この動きを練習しているのか」「この動きはどんなふうにみえるのか」「今の自分とどう違うのか」ということを一つひとつ疑問に思い、それを知識として受け入れたいという意味を込めて「いろいろなものを習っていきたい」と今は思っています。
自分の癖やできないことを分かった上で、一番好きな表現をやるべきかなと。「僕にしかできない表現」についてあまり発言してこなかったのは、自分の表現にまだ絶対的な自信がなかったからだと思います。僕はジャンプに関しては、もちろん僕よりジャンプが上手い選手もたくさんいますけど、それでも「ジャンプと向き合って考えた時間は、絶対に誰にも負けない」と言い切れる練習をしてきたので。まずは自分に自信を持てるほどに、ちゃんと自分と向き合いたいと思います。