
高年俸がネックでまとまらなかったトレード
出塁率は改善の余地があるだろう。ただ、オリックスでシーズン30本塁打をマークしたことが1度もないだけに本塁打を期待されるのはつらいところ。走塁と守備はNPBでは平均を下回っていたため、打撃に特化した中距離打者といえる。このプレースタイルがレッドソックスと合わなくなっている。
今年のレッドソックス打線にはアストロズからアレックス・ブレグマンが加入し、吉田は厳しい立場に追い込まれた。ブレグマンが三塁に入り、左の長距離砲のラファエル・デバースが指名打者に入った。吉田を指名打者で起用して、ブレグマンを二塁、デバースを三塁で起用する布陣も考えられるが、デバースの三塁の守備能力が低いことを考えると実現の可能性が低い。吉田はオープン戦11試合で打率.286、1本塁打、7打点と決して状態が悪いわけではなかったが、「外野を守れる状態になるまでメジャーでプレーさせない」という判断が下された時点で、起用の優先順位が低いということだろう。
現地メディアでは、昨オフから吉田のトレード移籍の可能性を報じてきた。実際に他球団の評価はどうだろうか。メジャーリーガーの代理人を務めた関係者が分析する。
「肩の状態をどう判断するかにもよりますが、高年俸がトレード成立のネックになっている部分があります。昨年も他球団にトレードを打診したが、まとまらなかったことが報じられました。レッドソックスは先発投手を強化したいので、今後は吉田の年俸の一部を負担して放出する選択肢が考えられます。アベレージが高くコンスタントに安打を打てる選手なので、貧打が課題の球団にとっては魅力的な選手です。常時試合に出続けられる環境なら、打率3割、20本塁打はクリアする力を持っています」
昨年の首位打者と近いプレースタイル
吉田に近いスタイルのプレーヤーとして、最も近いのがパドレスのルイス・アラエスか。昨年は打率.314で3度目の首位打者を獲得。大谷の三冠王を阻み、200安打はリーグ最多だった。メジャーが誇る球界屈指の安打製造機だが、それ以外に目立った成績はない。2ケタ本塁打をマークしたのは1度のみで長打力はなく、四球が少ないため出塁率も4割を超えたシーズンがない。守備、走塁での貢献度も低いため、メジャー球団の中でも評価が分かれる選手だ。
「吉田のほうがアラエスより長打力がありますが、安打を打つことに特化している点では参考になる部分があると思います。吉田は31歳という年齢を考えると、レッドソックスで起用されずに『塩漬け』になってしまうのはもったいない。必要とされる球団で輝きを取り戻してほしいです」(前出のスポーツ紙記者)
打撃だけを見れば、メジャーで通用している。真面目な性格でストイックに野球に取り組む姿勢は若手の模範になるだろう。レッドソックスで定位置を争うよりも、新天地で活躍する未来を想像するほうが現実的かもしれない。
(今川秀悟)