パート従業員の働き控えを招くとして日本商工会議所や連合などが「3号廃止」を求めていたが、厚生労働省は「すぐに廃止をすると不利益を被る人が多い」と、今回の年金制度改革では見送り、本格的な議論は5年後に持ち越した。

「年金制度改正の度に『3号廃止』の議論が出て、生活者の不安をあおっています。3号を廃止させたい人たちは、働き控えを招く、あるいは1号被保険者の配偶者は保険料を納めているので不公平だと、廃止の理由を主張していますが、不公平でも何でもない。『3号被保険者は保険料を納めないのに、将来年金を受け取るからズルい』というのは大きな誤解です」

 そう指摘するのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。荻原さんはコラムなどでこの「3号廃止論」を真っ向から否定している。

「3号被保険者の保険料というのは、配偶者が加入している厚生年金制度の財源から一括して国民年金に納められています。2号被保険者(厚生年金の加入者)が全体で負担しているので『3号の人たちは得している』と、損得で考えるのは間違った議論なのです。制度が導入された当時は、夫は働き、妻が専業主婦として家庭を支えるといった世帯が一般的だったので、専業主婦にも年金の受給資格を与えようと導入されました」(荻原さん)

「フルタイムで働かせたい」 

 さらにこんな背景もある。サラリーマン世帯の専業主婦は、公的年金に未加入のままだと、万が一離婚した場合、老後に無年金や低年金に陥ることが予想された。それを回避するため「3号被保険者」制度を導入。サラリーマン世帯の専業主婦は保険料を徴収しない形で強制加入にしたという経緯があるのだ。

「3号廃止論は、すべての女性をフルタイムで働かせたい。国民にできるだけ多くの保険料を納めてもらいたいという経済団体と政府の思惑から出ています。そもそも年金3号に該当する人は、共働きの増加に伴い、年々減ってきています」(同)

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