米国は「戦争の口実」を作る国
一方、最近、グローバルサウスの国々で米国離れ、中国再評価の動きが見える。これは米国から見ると危険なことだ。
仮に中国が台湾を攻撃すれば、世界中が反中国で団結する可能性がある。中国は孤立し、どこにも逃げ道がなくなる。米国の望むところだ。
戦争が始まっても米国は参戦しない。日本の自衛隊を最前線に立たせ、米国から大量の武器弾薬を「支援」と称して爆買いさせる。アメリカは潤うが死人は出ない。中国軍が台湾に上陸してくれれば、それを攻撃するという名目で、日本に台湾領土をミサイルや空爆で攻撃させる。そのついでにTSMCの工場も破壊して、最先端工場はアメリカにあるTSMCとサムスンとインテルの工場だけという状況を作る。米中戦争にはならない。これにより、中国への最先端半導体の流出は抑えられ、中国に10年以上の差をつければ、ASIへの到達で確実に中国に先んじることができ、米国が世界に君臨することができる。
その時にトランプ氏のような独裁者ではない人権重視の民主的な大統領が登場していれば、あらゆる困難な問題がASIで解決され、ユートピアに近づくという説もある。
しかし、もしその時に、トランプ氏の系譜を受け継ぐ独裁的人権無視の大統領であれば、その逆のディストピアが世界にやってくるということかもしれない。大変なリスクではないか。
少なくとも、世界経済から中国を排除すれば世界が良くなるというような単純な話を信じて、米国に乗せられて台湾有事に参戦するなどということは避けなければならない。
ディストピアを防ぐためには、日本が欧州やカナダ、韓国、そして、ASEAN、インド、ブラジルなどを含むグローバルサウスと協力して、民主的勢力が最先端AI開発の主要プレイヤーとなることを目指す必要がある。その際、中国とも協力できれば、アジアの安定にとっても有益だと思うが、日本の世論がそれを許すのか。
荒唐無稽な話のように聞こえるかもしれないが、トランプ氏が登場するまで、誰が、一方的に数十%の関税を課すことが許されると考えただろう。およそあり得ない話だったではないか。米国は、自国のために戦争の口実を作る国だ。ベトナム戦争然り、イラク戦争然りである。どうして、今回はそんなことはないと言えるのか。もはや米国に性善説は通用しないということを肝に銘じるべきだ。