例えばうつ病の一つに「反応性うつ病」というタイプがあります。明らかな原因がきっかけとなり、うつ状態になったタイプで、典型的なうつ病とは異なります。
抗うつ薬だけでは効かないことが多く、原因にアプローチする治療が必要です。このようにうつ病といってもタイプはさまざまで、程度による差も大きいものです。それを同じ薬で治療してもうまくいかないのは、当然といえるかもしれません。
原因がわかるだけで落ち着くことも
また、頭痛やめまいなどからだの症状からアプローチすることがある点も西洋医学と異なる点です。特にお子さんに多いのですが、精神的な不調が身体的な不調から来ることがあります。
例えば不登校のお子さんに頭痛があった場合に、「これは体内の水の巡りが悪くなっていることによる症状だから、からだを温めて血流をよくすることで、余分な水分を出しましょうね」という説明をすると、それだけで元気になるお子さんもいます。自分のからだの中で何が起こっているのかがわかるだけで、安心する方も多いのです。パニック障害も症状が起きているメカニズムがわかり、発作によって死ぬことはないということが理解できると落ち着くことがあります。それと同じです。
一方、重度のうつ病や統合失調症などの精神的な疾患は、西洋医学的な治療が不可欠です。そうした場合でも漢方薬を補助的に使用したり、ある程度症状が改善していく中で、漢方薬を追加したりすることはあります。例えばうつ病は抗うつ薬で治療しますが、食欲不振や睡眠障害といったうつ状態に伴って出てくる症状に漢方薬を使用することがあります。
不眠症の場合は、規則正しい生活を送って朝日を浴びる、寝る前3時間は仕事のことは忘れる、入浴で体温を上げて、下がってきたところで眠れるようにタイミングをとるなど生活上の注意点をお伝えしたうえで、原因を探ります。仕事のストレスによるイライラ、気候の変化や寒暖差など環境要因による自律神経の乱れのほか、明確な理由はないが中年期以降で眠りが浅いなど、原因やタイプによって漢方薬を使い分けます。漢方薬は1日2〜3回に分けて服用するのですが、日中飲んでも眠くならないという特徴があります。