一方、挑戦者としてミラノ五輪シーズンに臨むことは、坂本にとってプラスに働くかもしれない。また、坂本にとって今季はチャレンジのシーズンでもあった。フリーでは、昨季までは苦手としており1本のみだったルッツを2本組み込む構成に挑戦した。得点を上乗せできるプログラムを試した今季の経験が、来季生きてくる可能性は高い。
男子では、羽生結弦・宇野昌磨に続くエースとして日本を引っ張る鍵山優真が、銅メダルを獲得した。ショートでは、完璧な演技をみせて107.09というハイスコアをマーク。圧倒的な高難度構成で世界を牽引するイリア・マリニンに3.32点差に迫る2位につけ、好発進した。しかしフリーでは信じられないような崩れ方をしてしまい、フリーだけの順位は10位に。優勝したマリニンとの合計点での点差は、約40点まで開いてしまった。ショートではマリニンに肉薄しただけに、来季はフリーで安定した滑りをすることが課題になりそうだ。
連覇を果たしたマリニンは、フリーでアクセルを含む4回転全6種類を着氷させた。回転不足などのミスはあるものの、それは点数に伸びしろがあるということでもある。表現面でも独自の世界を確立しつつあり、ミラノの金メダルに最も近い位置にいることは間違いない。一方、鍵山はマリニンも感銘を受けたと言及するほど卓越したスケーティングを持っており、その強みを生かしてマリニンに迫りたいところだ。
北京五輪では、団体でも銀メダルを獲得した日本。ミラノ五輪の表彰式では、日の丸が何回掲げられるだろうか。
(文・沢田聡子)