若松勉監督は起用法に頭を悩ませたが、球団の要望もあり、我慢して使いつづけた。
ラミレスも日本の野球のレベルの高さに気づき、八重樫幸雄打撃コーチのアドバイスに素直に耳を傾けるようになった。そんな努力が実を結び、最終的に打率.280、29本塁打、88打点と、主砲として合格点の成績を残した。
13年間でNPB通算2017安打を記録し、外国人初の名球会入りをはたしたラミレスは、首位打者1度、本塁打王2度、打点王4度と、“NPB史上最強助っ人”と呼べるほどの実績を残したばかりでなく、DeNA監督時代の2017年には、シーズン3位から日本シリーズ進出をはたしたことも記憶に新しい。
2023年8月21日公開の「岡崎郁公式チャンネル」に出演したラミレス氏は、来日1年目の不振時に若松監督が使いつづけてくれたことに心から感謝し、「もしジャイアンツだったら、今、私はここにいないでしょう。すぐに2軍に落とされて、数カ月後には家に帰されていたでしょう」と振り返っている。
(文・久保田龍雄)
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。