「信頼のらせん関係」を形成するのは難しく、職場のコミュニケーションがギャップはなかなか埋まらない(写真:Getty Images)
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 AERAではこれまで上司と部下のギャップを何度も報じてきたがその多くは、悩む上司に焦点を当てたもの。ところが最近、上司から部下への信頼が弱い「片想い」型の関係が半数以上、という研究が発表された。どういうことなのか。AERA 2025年4月7日号より。

【意識調査結果】上司と部下、お互いに『忖度』しあってる?

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 上司と部下の信頼関係の約半数は、「部下の片想い」──。

 パーソル総合研究所と九州大学・池田浩研究室が共同で行った「上司と部下の信頼関係」に関する研究が今年2月、発表された。上司と部下の信頼関係を類型化したうち52.4%が、「信頼の一方向不全関係(部下の片想い)」であることがわかったという。部下は上司を信頼しているものの、上司が部下を十分に信頼していない状態を示すものだ。

 このところ私たちは、「部下への接し方に悩む上司」についての話題を目にすることが多かった。よかれと思い、少しキツめに注意すると「退職代行」を使って辞めてしまう。部下を飲みに誘うことさえ逡巡(しゅんじゅん)する上司を描いた「飲みに誘うのムズすぎ問題」のCMも記憶に新しい。何とか部下に信頼されたいと苦闘する上司と、それに応えない部下。そんな構図でとらえがちだったが、「逆だったのか!」と、驚く人も多いのではないか。

薄笑いを浮かべた表情

「私も、意外な結果でした」

 そう話すのは調査をした九州大学准教授の池田浩さん(47)。大学ではリーダーシップ論も担当、上司側から物事を見ることが多かったことも理由だと話す。

「でも部下の側に立って見れば、上司の期待に応え、信頼されたいと日々努力しているのに、その姿勢がなかなか評価されないと苦しんでいる部下は、おそらくたくさんいる。そこに目を向けることも重要だと思います」

 信頼に応えない上司。東京都の会社員の女性(27)には、忘れられない苦い経験がある。

 3年前、当時勤めていたIT系の会社でのこと。営業チームで進めていた、顧客に提供するシステムサービスのプロジェクトでトラブルが発生。補償が必要になる可能性が出てきた。

 チーム全体が頭を抱える中、女性は回避策を調べ、赤字にならずに対処できる道はあり、問題ないはずだと気づいた。しかし、それを説明した直属の上司(40代)から返ってきた言葉は「本当に大丈夫?」。薄笑いを浮かべたその表情は、女性への信頼が感じられないものだった。

 入社して3年、仕事への自信も出てきた頃だった。後日、女性の提案は正しいことがわかり補償は回避できたが、女性の落胆は大きかったという。

「すごくモチベーションが下がりました。私はその上司に尊敬の念があり、期待されているとばかり思っていたのですが、私の一方的な勘違いだった」

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