マウンドで雄叫びをあげるロッテの澤村拓一(日刊スポーツ)

球界再編騒動でパ・リーグは変わった

 この騒動が連日ニュースで大きく取り上げられる中、パ・リーグ球団の職員は心境が変化したという。

「お客さんが球場に来ない状況であっても、球団が消滅するなんて考えもしなかったんです。あの一件でファンの思いを知り、観客動員数を増やすために本気で取り組まないといけないと危機感を抱きました。パ・リーグの球団で働く職員は同じ気持ちだったと思います」

 パ・リーグの多くの球団が、球場でのイベントやプレゼントなどに力をこめるようになった。以前は全国各地で巨人ファンが圧倒的に多かったが、福岡のソフトバンク北海道日本ハム、東北の楽天と、地方都市に本拠地を置くパ・リーグ球団は地域密着に向けての取り組みにも力を入れた。パ・リーグからダルビッシュ有(日本ハム→現パドレス)、田中将大(楽天→現巨人)、柳田悠岐(ソフトバンク)、大谷翔平(日本ハム→現ドジャース)などのスーパースターが次々に誕生し、彼らのプレーを見たいというファンも球場に足を運ぶようになっていった。

 05年から始まったセ・パ交流戦も追い風になった。昨年までの19年間(2020年は中止)で、パ・リーグがセ・リーグに16度勝ち越し、交流戦優勝はパ・リーグ球団が14度と圧倒。「実力のパ」を証明するとともに、セ・リーグ球団のファンにも、パ・リーグの実力や選手たちの魅力が伝わった。手拍子と大声でサッカーのサポーターを彷彿とさせるロッテの斬新な応援スタイルも話題になった。

「セ・リーグはSNS発信が遅れている」

 セ・リーグの球団で働く関係者は「このままではパ・リーグに人気面でも抜かれますよ」と危惧を口にする。

「視聴者はSNSで情報を選択する時代になっている。ウチの40代以下の社員はみんな言っていますけど、セ・リーグはSNSを使った発信がパ・リーグに比べて遅れている。『パ・リーグTV』のセ・リーグ版を立ち上げるべきなのに、全然進みません。野球を知らないファンが選手のパーソナルな部分に魅力を感じて球場に足を運ぶかもしれない。今はお客さんが球場に集まっていますが、企業努力をしないと立ち遅れます」

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