巨人・大城卓三(写真提供・日刊スポーツ)
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 昨年はドジャース大谷翔平MLB史上初の54本塁打、59盗塁を達成し、走好守三拍子揃った野球選手が脚光を浴びているが、その一方で、スポーツ選手とは思えないような“鈍足”の選手も少なからず存在する。

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 まずはチームでも「ワースト級の鈍足」と言われているのが、巨人の捕手・大城卓三だ。

 昨年7月9日の広島戦では、岡本和真の右越え3ランで3対1と逆転し、なおも1死満塁の加点機に、三塁走者・大城は佐々木俊輔の左飛で4点目のホームを狙ったが、飛距離は十分だったにもかかわらず、本塁タッチアウト。ネット上で「遅すぎて草」「今の位置で間に合わないなら無理ゲーだろ」などの声が相次いだ。

 さらに同年8月14日の阪神戦でも、8回2死から右前安打で出塁した大城は、モンテスの左翼フェンス直撃の二塁打で、三塁コーチの指示に従って本塁をついたが、ヘッドスライディングも及ばず、無念のタッチアウト…。阿部慎之助監督から「もう3回くらい間一髪でアウトになってるから。あと1歩のリードだったり、そういうところが僕が大事だと思うし、足が速い遅いの問題じゃないと思う」と苦言を呈された。

 そんな大城も、今季は強力なライバル・甲斐拓也がFAで加入。3月9日のオープン戦、阪神戦では田中将大を好リードし、初回の中山礼都の左前タイムリーの際に一塁から三塁まで激走するなど燃えている。

 阿部監督の言うとおり、たとえ足が速くなくても、次の塁を狙う“準備”いかんでは、結果もまた違ってくるはず。はたして、鈍足の汚名返上なるか?

 球界きっての“鈍足男”がランニングホームランを記録する珍事が見られたのが、1970年7月21日のオールスター第3戦だ。

 1対6とリードされた全セは4回、安藤統夫(阪神)のタイムリーで1点を返したあと、なおも2死一、二塁のチャンスで、投手の渡辺秀武(巨人)の代打・遠井吾郎(阪神)が右翼線に長打コースの打球を放つ。

 そして、全セのベンチも「ツーベースや!」と盛り上がった直後、まさかのアクシデントが起きる。打球を追っていたライト・アルトマン(ロッテ)が芝生に足を取られて転倒。さらに倒れた際に左肩を強打して、苦悶の表情でのたうち回る。悪いときには悪いことが重なるもので、センターの白仁天(東映)もアルトマンが処理すると思っていたことから、バックアップが遅れてしまう。

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