
小林氏はインディアンスで1年目に57試合登板し、4勝5敗6セーブ2ホールドをマークしている。異国の地で挑戦する時に心掛けたことを聞くと、「言い訳をしないことですね」と即答した。
「ボールの滑り具合、マウンドの硬さ、移動距離が日本と違うし、米国の西海岸と東海岸で気候が違います。すべてを受け入れないと勝負できません。僕は直球が速いわけではなく、圧倒的な変化球を持っているわけでもない。シュート、スライダーと横の変化で勝負する投手でしたが、米国では一つの球種で球速や曲がり幅に変化を加えてバリエーションを増やしていました。日本人投手は器用さ、きめ細やかな作業が得意であることが大きな長所だと思います。メジャーで活躍した同学年の黒田博樹投手とよく情報交換しました。彼に『シュートを教えてほしい』と言われて、教えたツーシームが大きな武器になり僕よりうまく使っていた(笑)。黒田投手のように対応能力が高い投手が長年活躍できる世界です」
きっかけつかめれば
その点で楽しみなのが、35歳でメジャーに挑戦する菅野だという。「球を器用に操るし打者を打ち取る引き出しが多い。『この場面でこの球を投げるか』と意外な配球でファンを驚かせるかもしれない。これも野球の醍醐味ですよね。200イニング近く投げて10勝10敗の成績を残したら十分に合格点をつけられます」



メジャーで活躍する日本人投手が増えているが、厳しい現実を突きつけられるケースも。藤浪晋太郎(30、マリナーズ傘下)、今年から米国に渡った小笠原、青柳はオープン戦で結果を残せずに試行錯誤している。「藤浪投手は気になりますね。佐々木、大谷にも共通しますが160キロを超える速い球を投げられるのは、大きな才能です。なにかきっかけをつかめば大きく飛躍するかもしれない。メジャーで活躍したいと頑張っている姿に人間味を感じます。小笠原投手、青柳投手も今は苦しいかもしれないけど、投げ続ければコツをつかむ瞬間があるかもしれない。自分で選んだ道ですし、米国であがいてほしいですね」



野手は鈴木誠也(30、カブス)、吉田正尚(31、レッドソックス)が注目される。鈴木は主に指名打者で起用される今年は打率3割、30本塁打が達成可能な目標になる。吉田は故障で離脱せずにシーズンを完走できるかがカギを握る。アスレチックスでアメリカンドリームを目指す森井を含め、「16人の侍」の活躍が楽しみだ。(ライター・平尾類)
※AERA 2025年3月31日号

