大西 誤解をされたら困るんだけども、沖縄の写真だからというふうに僕は見なかったんです。沖縄であろうが、東京であろうが北海道であろうが、ある種の日常性に対してどういうふうにカメラがそこに即していくのかなということの興味があったんです。台湾まで行ってるわけだし、沖縄からアジアに対しての写真の広がりっていうのは期待できると思うので、日常性という観点で、上原さんがここでスタートしてたんだったら、また伸びしろとして僕はあるなと思っています。

目に見えないことをうまく切り取って作品にする力

事務局 最後に須藤絢乃さんについて。

澤田 前提として、審査をやるうえで自分と似ているジャンルの人に対しては、一般的にどの審査でも審査員って基本的に厳しくなると思うんです。専門的にやっているからこそだと思いますが、そういう目で私は彼女の作品をずっと見てきて、日本のサブカルチャーや、アンダーグラウンドの世界を切り取って作品にしているところ、目に見えないことをうまく切り取って作品にする力がある人だと思います。今はまだ形になっていないけど、彼女の作品はこれからどんどん増えていき、日本のサブカルチャーとか、日本独特、独自の文化のドキュメンタリー的な記録にもなる作品を作っていける作家になるんじゃないかと思っています。デジタルの時代になって、アイデンティティーの希薄さみたいなものがどんどん浮き彫りになっていく中で、他に類を見ない作家という評価です。ただ、わかりにくさみたいな部分もあるから、そこはこれからに期待したいですね。

大西 須藤さんの作品は、少女のシリーズは外で撮っているけど、わりとスタジオが多いじゃないですか、ライティングして。これって必然なんですかね?

澤田 いえ、ロケのほうが多いと思います。

大西 そうですか。

澤田 もうちょっと作品をつくるスピードを上げられたらいいかなと思うんですけど、その難しさもわかるので。

大西 なんで阿部定かよくわからなかったんですけど。

「ジャンル問わず長く続けている人は応援したい」と話す、澤田知子氏(写真:佐藤創紀 朝日新聞出版写真映像部)

澤田 突然行方がわからなくなった一世を風靡した人の中から、彼女が気になる人をピックアップして選んでいっているのかなと思いますね。

大西 何かテキストがあってじゃなくて。

澤田 そうじゃないと思います。

長島 みんな実在の人ですよね。 

事務局 彼女の中で興味がある、サブカルチャー的に引っかかってくる人ではないでしょうか。

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