大西 なかなか思いつかないな、と。さきほどの話じゃないけど、「ワカラナサ」を探求しようとしているという意思は感じられます。

根底にある存在の希薄さ

澤田 その存在が消えてしまった方の、存在の希薄さみたいなところが彼女の根底にあって、それを表せるモチーフとして今回はたぶん選んでいると思うんですよね。

大西 大阪芸大で教えていた学生が「行旅死亡人」をテーマに作品を制作してたんですよ。最終的に立体になっていったりということがあって、やっぱり存在の希薄さなんですね。路上で亡くなった人は官報でしか告知されない。名前もわからないこともあるし、どこで倒れていたのか、ジャンパー着ていたとか、資料を集めてそのビジュアルを作って、その人の架空のポートレートを作った。

澤田 長い間一つのことに向き合っているっていう意味でも、素晴らしい。やっぱり一つのことをずっとやり続けることの難しさっていうのは、自分自身が続けていると感じることなので。ジャンル問わず長く続けている人は応援したいなっていう気持ちにはなりますよね。

事務局 上原さんとは作品が全然違うけど、やはり作品が増えていくことによって、より厚みが出てくる。

澤田 そうですね、説得力が増すし、解釈の幅が広がるかなって思います。

大西 MIO写真奨励賞では森村泰昌さんが賞を与えたんですか?

澤田 そうです。

大西 ご本人にとっては森村さんの存在ってやっぱりあるでしょうね。

澤田 そう思いますけどね。須藤さんは、かなり幅広くいろんなことに興味を持っている印象があって、一つ気になるとものすごく丁寧に研究するタイプだと思うので、たぶん作品をつくるのも時間がかかるのだと想像します。

(対談まとめ:勝又ひろし)

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