
「日本の財政は火の車」という見方に違和感
永濱氏は、政府案についてこう切り捨てる。
「昨年の定額減税の結果を見れば分かるように、一時的、限定的な減税では消費喚起の効果は薄い。国民民主党が賛同しなかったのは理解します」(永濱氏)
与党が国民民主党の要求に応じなかった背景には、財源への懸念がある。103万円の壁を178万円に引き上げた場合、国と地方を合わせた税収減は約7.3兆円に上るとみられる。一方、政府案であれば約1.2兆円のマイナスで済む見込みだ。
だが永濱氏は、「緊縮財政のままでは停滞する日本経済は立ち直らない」と指摘する。
「インフレによって税収が増えている今、財政が悪化しすぎない範囲で国民に還元して、経済を回すべきです。そもそも、国会の議論でよく持ち出される『日本の財政は火の車』という見方には、エコノミストとして違和感があります。現在の金融市場において、日本はG7諸国で2番目に財政リスクが低い国という見方もあるんです」
財務省は、国債発行に頼らず税収で歳出を賄えているかを示す「プライマリーバランス」が赤字であることに警鐘を鳴らしている。しかし永濱氏によると、グローバルスタンダードな財務指標である「政府債務残高の対GDP比」を見れば、日本の財政は改善しつつあるというのだ。
国民民主党が掲げる「令和の所得倍増計画」には、こんな記述がある。
〈「未来志向の積極財政」と金融緩和で消費や投資を拡大させるとともに適正に価格転嫁できる環境を整え、持続的に物価を上回る賃金アップを実現します〉
この積極財政を目指す姿勢は、まさに永濱氏の見方と合致しており、同氏は玉木代表の手腕を高く評価する。
「ほとんどの政治家が役所の方針をうのみにする中、官僚出身者として内情が分かっている玉木さんだからこそのビジョンです。彼とは何度か議論したことがありますが、世界標準の経済政策論を理解されている稀有(けう)な政治家だと感じました」