元朝日新聞記者 稲垣えみ子
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 元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】今からルワンダに行って参ります!

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 料理家の枝元なほみさんが亡くなった。享年69。お会いしたことはないのだが、数年前に拙著『アフロえみ子の四季の食卓』が文庫になった時、素晴らしい解説を書いて頂いた。今にして思えば、既にご体調は万全でなかったのだと思う。改めて感謝の念でいっぱいである。

 実は、解説を誰にお願いするかは相当悩んだ。というのも、本の中身が「あるもんで適当に作る楽しい料理日記」で、要するに、皆レシピに頼りすぎてやしないかいと、レシピ業界に挑戦状を叩きつけるような内容なのである。

 編集者さんからは、我が意見に賛同してくれそうな方のリストが届いた。でも私としては、この機会に業界ど真ん中の、レシピ本を多数出している料理家の方に直球を投げ込んで、我が精一杯の投球をどう打ち返すのかを是非とも聞いてみたかったのだ。ってことで、何の縁も面識もないがふくよかなお人柄が大好きだった枝元さんにダメもとでお願いしたのである。果たして枝元さんは迷いながらもこの無茶振りを引き受けくださり、送っていただいた原稿を読んで、私は心が震えた。

色々あって今からルワンダに行って参ります。生きていることも含め、ご縁に感謝(写真/本人提供)

 枝元さんは私の暴投をあまりにもガッチリとキャッチして下さった。自分は「言うならば敵でありますぞ」と困惑しながらも、私の投げかけに応じて、貧乏な役者時代、友人夫婦の店でアルバイトをして自由にはちゃめちゃに料理していた若い頃を振り返り、それが編集者の目に留まって雑誌にレシピを書くようになったこと、業界の常識、読者の要求に合わせて何がどう変わっていったのかを改めて振り返って下さった。

 料理とは何か、食べるとはどういうことか。正解が用意されているとはみ出すことが怖くなるけれど、本当は料理に失敗なんてない、平均点の正解はどうにも力が湧いてこない、自分も自然を抱きしめるようなおおらかさを見習って、笑いながら美味しく食べていきたいとまで書いて下さった。私より熱く、私が言いたいことを書いて下さった。

 今改めてその解説を読み涙が出た。一生の宝物である。

AERA 2025年3月31日号

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