えちぜん鉄道:アナウンスを行うアテンダント。優しい笑顔での接客で、えちぜん鉄道の「顔」として全国の鉄道ファンを魅了する(写真:えちぜん鉄道提供)
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 ローカル線を取り巻く環境は、年々厳しさを増している。しかしそんな中、復活を遂げようとしている鉄道もある。ローカル線復活への道には何が必要か。AERA 2025年3月24日号より。

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 1両編成のディーゼルカーが住宅地や田園地帯を抜け、海へと向かう。春は、沿線に桜が咲き誇る。

 茨城県の中央部、太平洋に面したひたちなか市を走る「ひたちなか海浜鉄道」。勝田駅から阿字ケ浦(あじがうら)駅まで、14.3キロのローカル線だ。

 通勤で列車を利用しているという女性(54)は言う。

「鉄道は大事な足。安心して買い物にも行けます」

 一見、地方でよく見かけるローカル線。だが、鉄道関係者からは「奇跡のローカル線」と呼ばれる。一時は廃止も噂されたが、前代未聞とも言える「延伸」が決まった。昨年11月、終点の阿字ケ浦駅から、ネモフィラやコキアなどで有名な「国営ひたち海浜公園」の「南口」付近まで約1.4キロの施工認可を国から取得した。早ければ2030年の開業を見込む。

地域の衰退加速させる

 鉄道は社会資本であり、極めて公益性の高いインフラだ。しかし、日本の鉄道は、鉄道事業者が全てを独立採算で賄うのが原則。「赤」か「黒」かで判断され、赤字は事業として失敗とされ、廃止となってきた。少子化とマイカーの普及、そして都市への人口集中が進む中、稼ぐ力が細ったローカル線の廃止の議論が各地で進む。

 国土交通省によれば、23年度の中小の民間鉄道や第三セクターの経営状況は、全国96社のうち83%の80社が赤字となった。輸送人員も、1988年度以降に開業した事業者を除く70社は、新型コロナウイルスによる鉄道利用者の減少を経て、2023年度は約3億6千万人と、ピークの1991年度(約5億2千万人)から約31%も減少した。

 鉄道の「廃止」は何をもたらすのか。

「鉄道の廃止は、地域経済の衰退に繋がる」

 こう指摘するのは、交通評論家で、亜細亜大学講師の佐藤信之さんだ。その論理は「鉄道の衰退は地域の衰退の結果である」という見方もあるが、実際は「鉄道の衰退が地域の衰退を加速させる側面が強い」という。つまり、鉄道を廃止してバスに転換すると、バスを利用するのはマイカーを使えない人だけになる。その結果、バスの利用者は減りバス路線を維持することができなくなり、最終的には公共交通がなくなる、と。

「そうすると若者や働き盛りは集落を出て、移動手段をなくした人は、外出を控えるようになります。近隣の市街地で買い物をする人が減り、地域経済が縮小し、市街地が衰退していきます」(佐藤さん)

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