ドジャース戦で本塁打を放った阪神・佐藤輝明=日刊スポーツ

「佐藤輝はメジャーなら20本打てる」

 一方で、MLB公式球を打った日本の選手たちはどうだったか。阪神の佐藤輝明はドジャース戦の4回、サイ・ヤング賞を2度受賞した左腕・スネルの152キロ直球を右中間スタンドに叩きこんだ。スポーツ紙記者はこう振り返る。

「完ぺきに捉えた打球だったのでNPBの使用球でも本塁打になった可能性が高いとは思いますが、打球がグングン伸びるのを感じました。米国のメディアから『佐藤は昨年ホームランを何本打ったんだ?』と聞かれたので16本と答えたら、『なぜそんな少ないのか。メジャーなら20本は打てる』と驚いていました」

 NPBで昨シーズン、30本以上本塁打を打ったのは各リーグで本塁打王となった選手のみ。セ・リーグは33本の村上宗隆ヤクルト)、パ・リーグは34本の山川穂高ソフトバンク)の2人だけだった。打球が飛ばなければ、ヒットゾーンも減る。昨年打率3割以上をマークしたのはセ・リーグでオースティン(DeNA)、サンタナ(ヤクルト)、パ・リーグで近藤健介(ソフトバンク)の計3人だけだった。一方で投手成績を見ると、規定投球回数に到達した中で防御率1点台の投手は、セパ合わせて6人もいた。

 その5年前の2019年の成績をみると、まったく違う状況があった。30本塁打以上の選手はセ・リーグ7人、パ・リーグ7人の計14人とケタが違う。3割打者もセ・リーグ5人、パ・リーグ6人の計11人いた。一方で、防御率1点台の投手はセパ合わせて山本由伸(当時オリックス)1人だけだった。

「投高打低」は「ボールの影響もある」

 こんなに顕著な「投高打低」傾向になっている主な要因として、150キロ以上を計測する投手が大幅に増え、打者の攻略が難しくなっていることが言われてきた。だが、セ・リーグ球団でプレーする選手は「ボールの影響も間違いなくあると思います」と指摘する。

「米国で自主トレをした時にMLB公式球を打ったのですが、打った感覚が柔らかくてトップスピンをかけると打球が伸びていく感覚がありました。NPB公式球は打った感覚が硬くて打球が外野で失速してしまう。体感で5メートルぐらい飛距離が違いますね。この差は大きいですよ。ここ2、3年はさらに飛ばなくなっている感覚があります。フェンスを越えると思った打球が外野フライになったことが10打席以上ありました。投手からすればありがたいでしょうけど、打者からするとつらいですよ」

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WBCを見据えて公式球の見直しが必要?